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第57話
尾澤が戻って来ない……
もうすぐ次の授業が始まるのに未だに教室に戻って来ない尾澤の事が気になる朔夜
具合が悪いから保健室に行くって言ってたけど……
俺も行っちゃえ
そう思い、教室を出て保健室へ向かった
「え?いない?」
保険の教師に聞いてみたけど、尾澤はついさっき保健室に来て保冷剤だけを持って出て行ったと言う
じゃあさっきの時間は何処に行ってたんだろ
生徒会室にいるのかな?
尾澤が授業サボるなんて珍しい……
けど何で保冷剤?
そのまま生徒会室に行き、扉を開けようとした時中から話し声がうっすらと聞こえた
やっぱり尾澤はここに居るのか。でも一体誰と話してるんだろ
扉を開ける前に聞き耳を立てた
〈痛っ〉
〈大丈夫、優しくしますから〉
〈む、無理……〉
〈私を見て下さい。口を開けて……そう、上手〉
「……え?」
1人は確かに尾澤の声だけど……え、何してるの?
〈ひゃっ!〉
〈ほら、動かないで下さい〉
〈だって……あっ痛い……っ〉
〈すぐに良くなりますから〉
〈んんっ〉
「憂?」
ちょっと待て
何?何で憂が生徒会室にいるんだ
聞き間違えるはずがない。あれは憂の声だ
それにあの会話は……
段々動悸がしてきて思わず胸に手を当てた
尾澤と憂が……?
もしそうなら……
やばい、泣きそうだ
いつの間に2人はそんな仲に?
俺の方が憂といる時間が多いはずなのに何故……
さっき昼休みに会った時はそんな素振りなかった。尾澤も……
他の奴に取られる可能性を全く考えてなかった
その相手がまさか尾澤だなんて……
後退りし、拳をぎゅっと握り締めた
本当にそうなら俺は尾澤を許さない
憂は誰にも渡さない……でも、憂を傷つけたくない
「……っ」
どうしよう……胸が凄く苦しい。それと同時に心がぐちゃぐちゃになりそうだった
「憂……」
体がふらついたまま教室に戻ろうとした時、生徒会室の扉が開いた
「……朔夜?」
「え?」
「どうしたのです?こんな所で」
尾澤を押し退け、慌てて生徒会室の中へ入った
『いてて……あれ?朔夜先輩……』
「憂……」
ソファーに座って頬を押さえている憂
その手には保冷剤が握られていた
「どういう事?」
状況がわからない……尾澤に抱かれてたんじゃないのか?
「そんなに慌てて……何かありましたか?」
「えっいや……え、何してたの?」
「私はただ傷の手当てをしてただけですが」
傷……?
憂の方をもう1度よく見てみると、頬が赤く腫れていた
そしてその近くには血の付いたハンカチが置かれてあるのを見つけた
一体何が……
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