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第63話
昼休み、欠席だと思っていた奴が遅刻して登校して来たんだ
つかさず颯太がそいつの所に行こうとしたから俺は颯太をすぐに止めた
『いいって、これ以上ゴタつきたくないんだ』
「……ふんっ」
そいつは俺をチラッと見て自分の席へ大人しく行った
と思ったら別の人間に絡みだしたんだ
その相手は相変わらず本ばっかり読んでるもう1人の図書委員
俺は朔夜先輩や尾澤会長に助けてもらったけど、あいつを助けてくれる人はきっと誰もいない
教室の中にいる連中は皆んな見て見ぬふり
皆んな関わりたくないんだ……
自分より弱そうな奴ばかり狙うなんて本当に卑怯な奴だな
すると、颯太が動いた
「やめろよみっともねぇ」
「あ?お前に用はねーんだよ。引っ込んでろ」
『そ、颯太……』
「憂だけじゃなくてそいつにもちょっかいかけるつもりかよ。何様だっつーの」
「あ?」
睨み合う2人に俺はただオロオロするばかり
周りから見れば俺って本当に弱くて、見てるとイライラするだろうな
「憂、朔夜先輩が来た」
『えっ?』
颯太に言われて廊下に目をやると朔夜先輩が険しい顔でこっちを見ているのを見つけた
そして教室の中にズカズカと入って来て俺たちの所へ近づいて来たんだ
「何してんの?」
「……別に何でもないです」
「そう、わかってるよね?」
「……はい」
目線を下に外し、こっちも見ないで奴は渋々教室を出て行った
余程朔夜先輩に怯えているみたいだ
あの時何を言ったのかやはり気になる
『えっと、大丈夫だった?』
「余計な事しなくて結構」
もう1人の図書委員は本をしまって俺たちにそう言い、あいつの後を追うように教室から出て行ってしまった
え、大丈夫かな……
「何だよあいつ、人がせっかく……まぁいいや。面倒くせぇ」
「憂は気にしなくて大丈夫だよ。尾澤に目を付けられた以上多少の揉め事はあるだろうけど暴力沙汰にはならないよ。きっと」
『そうなの?』
「うん。それより傷は大丈夫?」
『……!』
朔夜先輩の手が口元に触れた
その瞬間顔面がカーーっと熱くなった
そ、颯太が変な事言うからだ!
「……ん?憂、熱ある?」
『いやっないけど!長袖だからちょっと暑くて』
「そっか」
チラッと颯太を見てみるとニタニタ笑って俺を見ていた
ちくしょー後で覚えてろ
「えー颯太君だっけ?」
「はい!何か?」
「憂連れてってもいい?」
「勿論!煮るなり焼くなり好きにしてあげて下さい!憂も泣いて喜びます!」
『何だよそれ』
「ありがとう。じゃあ好きにさせてもらおうかな」
「どーぞどーぞ!じゃっ!」
そう言って颯太は喋っている他の奴らの群れに混ざりに行ってしまった
「行こ」
『う、うん』
何か気まずいな……
自分の気持ちに気付いてしまったからどう先輩と接すればいいのかわからない
クラスの連中にジロジロ見られる事にもまだ慣れないしなんかめっちゃ恥ずかしいし
「大丈夫?」
『えっ?』
教室を出た途端先輩が顔を覗き込んできた
「やっぱり何か体調悪そうだけど」
『そうかな?別に普通だけど……』
「そう?」
『うん』
大丈夫
いつも通りに接すればいいだけだ
俺は昔から自分の気持ちを押し殺すのが得意だろ?
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