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第81話

「薬を塗る程度の事しか出来なくて……良かったらこれ着て」 先輩が無地のTシャツを持って来てくれた 『汚しちゃうからいいよ』 「気にしないで。はい」 『……ありがとう』 手渡された服を触った瞬間すぐにわかった この超サラサラな生地感。これはきっと高いやつだ 服に手を通し着てみると、丈が長めなだけで意外とそこまでブカブカでは無かった 先輩細いから…… 「今日は入浴は控えた方がいいね。もし気持ち悪いんだったら髪だけ洗ってあげようか?」 『大丈夫。明日の朝風呂入るから』 「……そう」 先輩はもういつも通りの先輩だった さっきまでの先輩はマジで雰囲気が違ってて、話しかけるのも躊躇してしまう程恐かった だけど本当に気まずい…… 色々考え過ぎて頭の中がパンクしそうだった 『先輩、迷惑ばかり掛けてごめん。俺のせいで……』 「憂は何も悪くない」 『だけど俺のせいで先輩が……退学はないって言ってたけどもし先輩が退学になっちゃったらどうしよう』 「退学になったらなったで別にいいよ」 『よくない!そんなの絶対に嫌だ』 「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。それよりも俺は憂の方が心配なんだ」 そう言って先輩は俺の頬を優しく撫でた 「怖かったよね」 『怖いって言うか……あの時は色々急な事ばかりで頭がついて行けてなくて、ただ痛みに耐えるしかなくて…… 先輩が来てくれなかったら今頃どうなってるのか……あっ……』 「何?」 思い出した 『写真……』 「写真?」 『俺、写真撮られたんだ……』 「は?」 『あいつ、自分の事異常性癖だとか何とか言ってたんだ。痣とか傷が好きで俺の背中の写真撮って記念にって……』 「あの野郎ッ!!」 『待ってダメだ先輩!!』 勢いよく立ち上がろうとした先輩を咄嗟に押さえた 『うつ伏せだったから顔は写ってないって!』 「そういう問題じゃない!携帯で撮られたの?クソッ今から潰しに行く!!」 『だからダメだってば!!俺のせいでこれ以上先輩に迷惑掛けたくないんだ!』 「……っ」 『お願い!先輩……お願いだから』 「…………」 先輩の体から徐々に力が抜けていくのがわかる 溜息を吐いた後、先輩はゆっくり俺の横に座り直した 「……わかった、だけど必ずどうにかするから。 そうだね、俺のこういう所が憂に気を使わせてしまってるんだよね。……ごめん」 『俺は大丈夫だから……ありがとう』 「うん」 ようやく落ち着いてくれた先輩を俺はぎゅっと抱きしめた 『本当に助けてくれてありがとう。 ……俺、そろそろ帰るよ』 そう言い立ち上がろうとしたらグッと手を握られた 「ダメ、ここに居て」 『流石にまずいって。迷惑掛け過ぎだから』 「迷惑だなんて思ってない」 『だけど……』 「じゃあ今日は俺の為に一緒に居てよ。じゃないと俺何するかわからないよ?……見張っててよ」 『それって脅してる?』 「うん」 先輩は俺を引き留めるのが上手い…… そんな事を言われると気になり過ぎて帰れないじゃんか

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