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第82話

だけど、何の用意も持って来てない 着替えを取りに帰るって言ったら先輩はどこかの部屋から包装されたままの新品の下着を出して来た 「あげるよ、怪我してるんだから大人しくしてなきゃ。フリーサイズだし多分大丈夫と思うよ。明日風呂上がりにでも着替えたらいいよ」 『先輩んち何でもあり過ぎるでしょ』 「そう?」 続いてズボンも出して来てくれたんだけど…… 『先輩、裾が……』 「大丈夫、こんなのは折って履けばいいんだから」 お、折……短足過ぎて恥ずかしい 「何か食べる?」 『ううん、あんまり食欲がなくて』 「……そっか」 焼けるように熱い背中のせいで全然食事をする気分にはなれなかった。それにさっきから頭痛もするし 腕にくっきりとつけられた歯型が視界に入る度に吐き気もする 『先輩、何か膝掛けみたいなのある?』 「寒い?」 『そうじゃないんだけど……ソファーで寝てもいい?それか絨毯の上とか』 「眠い?ベッド行こう」 『や、風呂入ってないからダメだって』 「俺がそんな事気にすると思う?大丈夫だからおいで」 『う、うん』 寝室へ連れて行ってもらい、布団の中へ潜らせてもらった 『そうだ、気になってたんだけどこれってキングサイズ?』 「ベッドの事?確かクイーンの方だと思うけど」 『へぇー……』 「憂が寝るなら俺も寝よっかな」 そう言って先輩も中へ潜り込んで来た 「俺も明日起きてからシャワー浴びよっと。だから憂と一緒」 『先輩……』 きっと俺が気を遣わないようにしてくれてるんだ 「大丈夫?」 『うん、ありがとう』 本当は背中がズキズキ痛過ぎて眠れるかわからなかった だけど先輩がすぐ隣に居てくれたから…… 安心したのか俺はすぐに深い眠りに落ちたんだ 『う、うう…………』 夜中、唸り声が聞こえて目が覚めた サイドライトをつけ憂の様子を見てみると苦しそうな表情を浮かべていた 「憂?」 額に手を当ててみるとかなり熱くなっていた やっぱり…… そんな気がしていた。傷の痛みのせいで熱が出ると思った だから余計に憂を帰したくなかったんだ 起こさないようにそっとベッドを抜け出し寝る前に冷やしておいたタオルを憂の額に当てた 『ん……』 「ごめん、起こした?」 『……気持ちいい』 表情が少し柔らかくなった 「大丈夫。そばにいるから眠って」 『うん……』 俺の服をぎゅっと握りしめる憂 しばらくすると、また寝息が聞こえて来た きっと寝ぼけていたんだろうな 先程とは違い安心した表情で眠る姿を見て自分も少し安心した 傷に触れないように気を付けながらそっと抱き寄せ、しばらく様子を見てから再び目を閉じた .

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