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第85話
『またそんな冗談を……』
「……」
いや、今回は冗談ではないと思った
先輩があまりにも真剣な顔をしてるから……
「……いい?」
『えっと、あの……えっ?』
濡れ髪の先輩はかなりヤバい
じっと見つめられるだけで心臓がバクバクしてきて顔が段々と熱くなってきた
「ダメならダメってはっきり言って。じゃないと期待しちゃうから」
『……ダメじゃない』
そう言った時、先輩の手が俺の頬を優しく撫でた
「……真っ赤」
『だ、だって先輩が…………んっ』
そのまま頭を引き寄せられキスされた
俺はもうただ恥ずかし過ぎて……
「……唇に力入り過ぎ」
『だ、だって……』
「ん?」
『俺、キスすんの初めてなんだから……』
「あー……ごめん憂、その事なんだけど……」
『え?』
急に先輩が気まずそうな顔をした
「……まぁいいや」
『え?何?気にな……んんっ!』
何度も何度もキスをされ、もう頭と心臓がパンクしそうだった
背中に触れないように俺を抱き寄せてまたキスして……
どうしよう。俺、先輩とキスしちゃってる
ヤバい
恥ずかしい!
やばいって!!!
その時、先輩の携帯が鳴り始めた
『先輩……電話じゃ……っ』
「出なくていいよ」
『ダメだって……んんっ』
「口開けて」
『待っ…ちょっと待っ……んんっ!』
口の中に先輩の舌が入ってきた
舌!!舌が!!
『息出来なっ……っ』
今自分が何をされてるのか全くわからなくて……
俺の舌に先輩の舌が絡んで来て……だけどなんか気持ち良くて恥ずかしくて
鳴り止まない電話の音が唯一俺の意識をはっきりとさせていた
『電話出なきゃ……』
「…………」
『先輩……』
唇をそっと離し、先輩は携帯を取りに行った
そして俺はその場にへたり込んでしまった
プシューって空気が抜けたみたいにさ……
電話に出た先輩は超不機嫌な口調で誰かと喋っていた
そして少し話した後、携帯をソファーへ投げた
「……タイミング悪過ぎ。本当いい性格してるよね」
『誰だったの?』
「尾澤。謹慎中は絶対に不必要な外出はするなって電話だよ……全く」
『会長らしいね』
「せっかく憂とイチャイチャしてたのに。ムカつく」
『あはは……は……』
そして俺は熱をぶり返しまた寝込んだ
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