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第132話
中庭に行くと、朔夜はもう来ていた
「憂!」
『ん、遅れてごめん。ちょっと売店寄ってて』
「お昼はちゃんと食べた?」
『うん』
いつも通り何も変わらずに話をする朔夜
俺はさっきの光景を見てからモヤモヤしっぱなしだよ
「体は大丈夫?」
『体?』
……!
昨夜の事を思い出し急に顔が熱くなった
「あはっ真っ赤」
『うるさいなー、1時間目から抜き打ちあって大変だったんだからっ』
良かった、普通に喋れてる
「朝からあったの?」
『うん、まさかだろ?』
「遅刻気味だったから危なかったね」
『うん』
ベンチに座り足を軽くぷらぷらと揺らした
「あ、そうそう」
『ん?』
「俺の前の席の奴がねー、あっちの森やってたから色々聞いたんだけど」
『あっちの森?』
朔夜はポケットから紙を1枚出してきて俺に見せてきた
これは……
『えっこれってこの間アップデートされたばっかのレアアイテムじゃん!ちょっと貸して』
「うん」
朔夜から紙を受け取り書いてある内容をマジマジと読んでみた
『……成る程、時間帯があったのか。だからあれだけ探しても出なかったのかーっ』
「いい情報はあった?」
『うん!』
「良かった」
前の席の奴……もしかしてさっき楽しそうに話してたのってこの話してたからなのかな
しかもこれって上級者向けのアイテムだし
朔夜はまだ初心者
だとしたら俺の為に聞いてくれてたのかな……
そう思うと少しだけモヤモヤした気持ちが薄れた気がした
ん?
『待って、この紙って……』
紙の裏側を見て頭の中はクエスチョンマークだらけになった
進路希望記入欄……
『朔夜、この紙ってもういらないやつ?』
「ん?」
『いや、ん?じゃなくて』
「さぁ……」
『だ、ダメじゃん!!これめっちゃ大事なプリントじゃんか!進路だろ!?』
「憂は俺が卒業しちゃってもいいの?」
『いやっそれとこれとは話が別だから!』
確かに朔夜が学校からいなくなっちゃうと思ったら寂しいけど……でもそれは初めからわかってる事だし
『教室に戻ったらすぐに新しい用紙もらいなよ!?』
「んー」
『絶対だからね!?』
「うんうん」
『尾澤会長にまた怒られるよ!?』
「わかったよ」
ふぅっと一息つき紙を朔夜に返そうとした
「いいよ持ってなよ」
『でも……』
「新しいのちゃんともらうから。ねっ?」
『わかった』
せっかく朔夜がメモしてくれたんだし、有り難く貰う事にした
だけど他に何か紙なかったのかな
「憂?」
『んー?』
呼ばれてパッと朔夜の方に顔を向けてみると、真前に朔夜の顔が近付いてきたもんだからびっくりして咄嗟に口を手で塞いだ
『怒るって言ったよ?』
「わかってる」
『じゃあ何で……』
「見せつけたいから」
一体誰に?
『人いるから本当無理』
「だからだよ」
何だか朔夜の様子がおかしい
いつもなら俺が嫌がればすぐに諦めてくれるのに
一体どうしちゃったんだろ
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