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第149話
あの後勝哉さんは顔を真っ赤にしたまま何も言わずに家から出て行ってしまった
私に色々言われたのが余程恥ずかしかったのか……
強面な外見なのに可愛い一面もあったんだな
勝哉さんの連絡先を聞いておけば良かったと休日の間ずっと思っていた
まぁ連絡した所で何をする訳でもないし電話に出てくれるかもわからないしまた機会があればその時にでも聞けばいいか
そして週明け、学校に行くと1番に朔夜が話しかけて来た
「憂は可愛過ぎる」
「憂君ですか?」
彼は私に会う度に憂君の話をしてくる
「そう!昨日一昨日とまた2日連続俺んちに居たんだけどさ、いつも作って貰ってばかりだから次の休みは俺が朔夜の為にご飯作るとか言うんだよ。ヤバくない?」
「ほぅ、それはなかなか可愛いですね」
「でしょー?」
「因みに憂君の料理の腕は?」
「んー……うん」
「成る程……でも大事なのは気持ちですもんね」
「そうなんだよね。見守るつもりではいるんだけど……一体何を作るつもりなんだろう」
「それもまたお楽しみですね」
「そうだね」
「そう言えば今週末には提出ですよ?」
「わかってるよ」
「用紙はありますね?」
「あるある」
「宜しくお願いしますね」
「はいはい」
適当に流そうとするって事はきっとまだ何も書いてないな……
それにしても相変わらず憂君を溺愛しているようだ
人を遠ざけてばかりだったあの朔夜がまさかこんなにもあの子に執着するとは思わなかった
何があるか本当に分からないものだな
いつも通り授業が始まり黒板の字を書き写す
特に重要な所ではなさそうだが一応……
今日は放課後に生徒会役員会があるから色々纏めておいた方がいいかも知れないとふと思った
昼休みにでもやるか
チャイムが鳴り鞄を持って生徒会室に向かった
母さんに作って貰った弁当とファイルを出し食事をしながら目を通して行く
今学期最後の生徒会役員会だから言いたい事は全て言い尽くさないと
「おっすーっ!!」
大きな声と共に生徒会室のドアがまた勢い良く開いた
「……ん?こんな所で飯食ってんのか?」
「勝哉さん、ドアを開ける時は先にノックをするかゆっくり開けてもらえませんか?」
「面倒臭え」
「今日は早い訪問ですが昼食は?」
「早弁したからもうねえ!」
早弁……
「そうですか。別に居ても構いませんがやる事があるので静かにお願いしますね」
「素っ気ねぇなー」
この間顔を真っ赤にしたまま家から出て行ったくせに何もなかったように振る舞う勝哉さんを見て微笑ましい気持ちになった
あの時はあんなに恥ずかしがってたくせに……
ふと我に返り気を取り直して再び集中し直した
「おい」
「はい」
パッと顔を上げると直ぐ横に勝哉さんの顔があった
「……何か?」
「シワ!しーわ!」
眉間を突かれた
「やめて下さい」
「飯食ってる時ぐらい飯に集中しろよ!」
「今日は放課後に生徒会役員会があるんです。それまでにやらないといけません」
「飯!」
「あっ!」
開いていたファイルをバンッと閉じられた
仕方ない……
「わかりましたよ。確かに食事中に他の事をするのは行儀が良くありませんね」
「そうだ」
ひとまず食事に集中し、終わったら直ぐに続きをやる事にした
「あの……」
「何だ」
「近いです」
食事を済ませ続きを再開していたら再び勝哉さんがそばに来ていた
「気にすんな」
「ソファーで寝ないんですか?」
「後でな」
「すいません、正直に言います。邪魔です」
「ああ?」
こんなに近くに居られるとドキドキしてしまって集中したくても集中出来ない
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