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第155話
朝、学校に行くと勝哉さんの機嫌がかなり良かった
道端に落ちている小銭でも見つけて拾ったんだろうか……500円玉だったら俺は結構テンション上がるけど
「なぁチビ助」
『はい?』
「お前のマイブームは何だ?」
な、何だいきなり……
『マイブームですか?そうですね……やっぱあっちの森ですかね?』
「あっちの森だと?」
『はい!超面白いですよ!勝哉さんやった事ありますか?』
「ゲームか……ゲームなぁ」
『あの……?』
「やっぱいいわ、インドアに聞いた俺が馬鹿だったわ。颯太郎に後で聞いてみるか」
人に聞いておきながらなんじゃそりゃ
勝哉さんは席を立ち颯太の元へ気怠そうに向かって行った
こんな扱いを受けるのはいつもの事だから別に気にしてはないんだけど勝哉さんは一体何を聞きたかったんだろうか……
特に気にせず勝哉さんの後を追いかけ、自分も颯太の所へ行った
「なぁ颯太郎」
「何すか?」
「お前のマイブームは何だ?」
「俺ですか?そうですね……」
俺と同じ質問をされてる
颯太は何て答えるんだろ……
勝哉さんの後ろで盗み聞きをするかのようにコソコソする俺
「釣りっすかねー、あとは原付欲しいんで今色々調べてる最中っす!」
「釣りだぁ?原チャだぁ??」
ふふふ、颯太も俺みたいに貶されればいい
「釣りって何処行ってんだ?」
なんと勝哉さんが釣りに食いついた
「あ、良かったら今度の休み一緒に行きます?でもテスト前か……」
「おお行こうぜ!案内してくれよ!」
「でもテスト前っすけど大丈夫ですか?」
「んなもん俺には関係ねぇっ!」
「そうっすよね!……ってあれ?憂、お前そんな所で何してんだ?」
『別に……』
「ねぇ尾澤」
「何でしょう?」
「何か機嫌良いよね?いい事でもあったのかな?」
何となく口角が上がっている尾澤に聞いてみた
他の人から見れば何ら変わりのない無表情な尾澤だけど、俺の目は誤魔化せない
「……分かりますか?」
「うん、とても」
「流石ですね」
「で、どうして機嫌がいいのかな?」
しばらく考えているような顔をした後、尾澤は鞄からペンケースを取り出した
「これですよ」
尾澤はペンケースに付いたキーホルダーを手に持ち微笑んだ
「猫のキーホルダー?」
「ええ、ある人から頂きまして」
「ある人?」
「勝哉さんですよ」
「勝哉?勝哉って憂にちょっかいかけてるあの糞野郎でしょ?どうして尾澤がそんな奴からキーホルダーなんか貰ってるの?」
「……さぁ、どうしてでしょうね」
「まさか尾澤……」
「さて、来週は期末テストですし勉強でもしますか」
「待って尾澤本当に!?」
「ん?」
「反対!絶対に反対!あんなチャランポランの何処がいいの!?」
「チャランポラン……朔夜は知らないでしょうが意外と優しい方なのですよ?」
「……本気?」
「ええ」
「尾澤がそう言うんだったら……でも何か嫌な事されたら絶対俺に言うんだよ?懲らしめてやるから!」
「懲らしめてやるって、子供じゃないんですから」
クスクスと笑う尾澤は何だかとっても雰囲気が柔らかくなっていた
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