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第169話

「いやーっ晴れて良かったっすね!」 「おー」 勝哉さんと2人で釣りにやって来た 何だかんだ勝哉さんって見た目超不良だけど来る途中もさり気無く荷物持ってくれたり普通に優しくて驚いた 「この池今俺のお気に入りっす。この間スゲーでかいナマズ釣れました!」 「ナマズ?マジか!」 「今日は日曜だからちょこちょこ釣りやってる人いますね」 「そうみたいだな」 俺がいつも釣ってるポイントはこの橋の上 どうやら今日は先客がいるみたいだ 早速荷物を下ろし釣竿の準備 「俺これ苦手なんだよな」 「あー糸絡まると怠いっすもんね」 「やってくれ」 「了解!」 自分の分と勝哉さんの分の釣竿を用意し、早速釣り開始 隣の人と絡まらないように気をつけて投げないと……ってあれ? 「ん?どーした?」 「勝哉さんやばいっす!エサがない!店で買ってそのままレジに置きっぱなしにしちゃったかも!」 「ああー!?マジかお前!チビ助みたいな事やらかすんじゃねーよ!」 「どうしよう!店まで取りに……や、遠いし今からだと遅くなっちまう」 「どっか穴でも掘るか?ミミズぐらいいるだろ」 「1匹や2匹そこらじゃ足りませんって」 「あー?じゃあこれでいいんじゃね?」 そう言ってセミの抜け殻を針に刺した 「そんなんじゃダメですって」 「そーか?」 俺達がわーわー騒いでいると、隣で先に釣りをしていた人に声を掛けられた 「あの……良かったら使いますか?」 「えっ?」 パッと声の主を見てみると、俺の思考回路が停止した か、かっ……ヤバ!!鬼格好いい!! 「お?何だてめぇエサくれんのか?」 「全然いいっすよ。1人で使うにはちょっと多かったし」 「悪りぃなー!おい颯太郎、エサ分けてくれるってよ!」 「本当ですか!?ありがとうございますっ」 やったラッキー!危うく勝哉さんをつまらなくさせてしまう所だった 感謝感謝 「何だお前1人で釣りか?よく来んのか?」 勝哉さんが色々話し掛け始めた 「家が騒々しくて一人になりたい時によく釣りに来るんすよ」 「へぇー……ってめっちゃ騒いじゃってごめんなさい。しかも釣りしてる最中なのに尚更」 「全然大丈夫っす」 家が騒々しいって、大家族とかそんなんなのかな でもこの人初対面なのに勝哉さんと普通に会話してるし。スゲーな…… 今じゃ大分慣れたけど俺は最初ビビり過ぎてやばかったのに 「年は?」 「高一です」 「えっマジで!?」 超落ち着いてる雰囲気だから絶対年上かと思ったのに! 「じゃあ俺とタメじゃん。勝哉さんも1年なんだけど年は俺らより2つ上で……あっ勝哉さんってこちらの方で、俺は颯太!」 「俺は浩介っす。じゃあ勝哉さんは先輩になるんすね」 「おうよ!まぁ学年は一緒だけどな」 「なぁ、高校は?何処行ってんの?」 勝哉さんに便乗して俺も気になった事を聞いた 「俺は……」 聞かれた質問もちゃんと答えてくれる浩介君に俺は興味津々だった この場所によく釣りに来るって言ってたよな…… こんな格好いい奴なのにどうしてその存在に今まで気が付かなかったんだろう それだけ俺は周りが見えてないって事だろうか でも勝哉さんがいなかったら俺こんなに喋れてないかも…… 「浩介君の高校って確か弓道部に全国大会出るようなスゲー奴がいるってダチから聞いた事あるんだけどそれってマジなの?」 「それ俺っす」 「マジで!?」 「お前弓道部?あーなんかそんな感じするわ」 「そうっすか?」 お、俺の心も射抜いて欲しい…… そんなバカな事を考えながら色々話をしてるから釣りをしている事なんかすっかり忘れてしまっていた 「あ!勝哉さん引いてますよ!」 「あ?」 「引いて引いて!」 「こうか?」 「……おおっ!って何だこいつ」 「ブルーギルですね。外来種です」 「ほー」 自分も一度引き上げてみると、既にエサを盗られていた そりゃいくら待っても何も釣れない訳だ…… 「浩介君はどう?」 「俺も全然っす」 「もしかしたら俺達が騒いでるから魚が全部逃げちゃってるのかも……申し訳ねぇ」 「そんな気を落とさないでよ。俺も喋ってるし釣りしてるよりか颯太君達と喋ってる方が楽しいし。っつーか俺も釣りしてる事すっかり忘れちまってた……エサ付いてねぇし」 「あははっお前もかよ!」 俺がキャッキャ笑っていると、勝哉さんが竿を置いて何処かに行こうとしていた 「何処行くんですか?」 「あ?煙草だ煙草」 「あ、わかりました!」 浩介君から分けてもらった餌を再び針に…… 「いてっ!」 針が指に刺さった 「大丈夫?ちょっと待って」 浩介君はポケットからティッシュを取り出しさっと俺の指に巻いてくれた 「こんぐれぇの応急処置しか出来ねぇけど何もしないよりかはいいと思うから」 「あ、ありがとう」 いきなり距離が近くなってドキッとしてしまった ってか男なのにティッシュ持ち歩いてる時点で色々凄いよな 爆イケな上に優しい……こいつはかなりモテるぞ それから勝哉さんが戻って来るまで浩介君と釣りの事とか他愛のない話をした 釣れた魚を引き上げようとしたらブラックバスに食われてそのまま持っていかれたとかそんなくだらない話…… それでも楽しそうに俺の話を聞いてくれてるんだ 聞き上手だこの人 .

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