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第6話

 望月は猛然ともがいた。すると未だに締めているネクタイが鞭のようにしなって、眼鏡を打ち叩いていった。ワイシャツがまとわりつく上半身に対して下半身はむき出し。あられもない姿どころの騒ぎじゃない。  なんの因果で男に、それも六つも年下の若僧にもてあそばれる羽目に陥る。厄日にしても最低だ。   山岸が満足げにうなずき、ヘッドボードに手を伸ばした。いきり立った自身にコンドームを装着すると、逃げを打つ躰にあらためてのしかかった。  腰を抱え込まれた。ゴムで覆われたがギャザーをかき分けにかかる。のっぴきならない窮地に立たされて、それでも望月は高をくくっていた。  そうだ、これは悪質な冗談だ。助けてくれ、と恥も外聞もかなぐり捨てて哀願した瞬間、ドッキリ成功、と山岸はゲラゲラと笑いだすに決まっている。  ずぶ、と先端がめり込んだ。 「痛ーっ!」 「はいはい、力まない、力まない」  ジャッキアップするように、双丘とシーツの間に膝頭がこじ入れられた。いちだんと腰が浮き、番いやすい態勢が整った。  うがつ角度に微調整をほどこしておいて、山岸がのめった。そして力任せに腰を進めた。  熱くて硬い塊が、ずずず、と門をくぐるにしたがって胃袋がでんぐり返るようだ。望月はえずいた。するとその振動が(なか)に響き、そこを侵略しつつあるものの存在を否応なしに意識させられた。 「……ぅ、ん、ぁ、やめて……くれ」 「抵抗されると逆に燃えちゃうのが男の(さが)」    顔じゅう脂汗にまみれて、頭を打ち振れば眼鏡がずり落ちる。足をばたつかせるそばから押さえ込まれて、容赦なく攻め入ってこられる。  悪夢だ、チャンポンしたビールと熱燗とテキーラが脳内で化学変化を起こして、自分史上最悪の悪夢にうなされているのだ。 

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