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第8話

 屹立が、いったん入り口のきわまで退いた。一拍おいて、花びらがすぼむ瞬間を狙い澄ましてえぐり込む。  切っ先がさらなる深みを嬲りのめしていけば、ぐちゅぐちゅとローションが泡立つ。ついでに脳みそも攪拌(かくはん)されるようで、淫靡な水音にそそられるものがあった。  ところで、それはある種の人体の神秘だ。内壁が圧倒的な量感になじんでいき、ついには雄渾にしなだれかかる。肌は桜色に染まり、しっとりと汗ばむさまはいちだんと征服欲をかき立てる。現に腰づかいに拍車がかかった。 「ぅ、くっ、ああ、痛い……痛いっ!」  そういう構造にはできていない器官でまぐわえば、受け身の立場を強いられる側の負担はすさまじく大きい。襞を巻き取っていきながら抜き差しを刻まれると、鋭い痛みがぶり返す。  しがみつくものを求めて宙を行き惑う腕が摑み取られて、首筋へといざなわれた。盆の窪に手刀を叩きつけて返すと、両手で頬を挟みつけられて正面を向かされた。  眼鏡のレンズは汗で曇り、ぼやけがちな視界に肉感的な唇がアップで迫る。嫌な予感に顔を背けようとしたときには、すでに唇が重なっていた。  ついばみ、離れて、またついばみにくる。そのサイクルを繰り返す合間に、望月は上下の前歯をかちかちと鳴らして威嚇した。 「おれには、きみに嚙みつく権利がある!」  と、怒鳴ったのが(あだ)になった。唇の結び目がゆるんだ機を逃さず、舌でこじ開けられた。  本気で舌を嚙みちぎってやろうか、と望月は考えた。だが、傷害罪に問われることがあれば割に合わない。もたもたしている間に舌は口腔をひと掃きしただけで出ていき、あっさりした様子に、なぜだか物足りなさを覚えた。  ともあれ一定のペースを保って筒全体にブラッシングをほどこされると、襞が軋めく。なのに(なか)のある一点を突きしだかれるたびに腰が跳ねる。  ペニスはいつしか蜜をはらみ、ぬめりを塗り広げるように指が蠢くと、後から後から穂先に露を結ぶ。

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