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第18話

 のみならず男難の相が出ているのかもしれない。帰宅するとコートを脱ぐ暇も惜しんで、スノードームをゴミ袋に放り込んだ。  こんな忌まわしいものを麗々しく飾っておくから、山岸にまつわる記憶を封印しそこねるのだ。 「つぎの不燃ゴミの収集は、さ来週か……」  しぶしぶという(てい)でスノードームを本棚に戻した。物に八つ当たりするなど、みっともない。やはりあの場で山岸を八つ裂きにして、それでケリをつけるべきだったのだ。  眼鏡をずらし、熱を帯びているように感じられる瞼を揉んだ。 「……うどんでも茹でるか」  そうだ、気が滅入りがちなときは食べて寝るのが一番だ。ところが横になれば、シングルベッドがやけに広く感じられて目が冴えていく一方だ。  午前二時を回った。この時間に作動するようにタイマーがセットされていたかのごとく、記憶の扉が開く。  先週の金曜日は、ひょんなことから山岸と酒を酌み交わすことになったっけ。勧め上手で聞き上手の彼と差しつ差されつやれば、カウンセリングを受けるより気分がほぐれた。  両手を組んで後ろ頭にあてがい、さらに回想にふける。  ちょうど先週の今時分だ。しなやかな指にを暴かれて、幽体離脱というやつを経験しかねないほど驚いた。  乳首を揉みつぶされ、後ろを執拗にかき混ぜられ、とどめにいきり立ったアレをえぐり込まれた──。  寝た子を起こす形になった。衝撃的という言葉ではとうてい言い表せない諸々のことをありありと思い出した瞬間、下腹部に違和感を覚えた。  かけ布団をめくってみればスウェットパンツの中心が隆起しかかっているが別段、不思議じゃない。  週一ペースで処理する習慣で、周期的に今夜あたりもよおすころだ。  さっそく下着とひとまとめにスウェットパンツをずりおろせば、あにはからんや。  準備運動を行うように、いわゆるオカズを思い浮かべて淫らなモードにスイッチを切り替える必要がない。股間に手を伸ばすとペニスは早くも蜜をはらみ、指がぬらつく。   握った。ひとしごき、ふたしごきすれば脳内のスクリーンに大写しになるものがある。   それは山岸の顔だ。望月を征服し終えた悦びに満ちて誇らかな、

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