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第34話
望月は怖気づいた。しかし今さら引っ込みがつかない。すり足でソファの正面に進むと、手首を摑まれてしゃがむように促された。
恐るおそる膝をたたむ。肩幅に開かれた足の間におさまる格好だ。するとキューが出されたように後ろ頭に手が添えられ、反射的に顔をうつむけた。
なおも頭を押されると、必然的に腰を後ろにずらさざるをえなくなる。前にのめったぶんだけ、ペニスと口の距離が縮まっていく。
穂先がアップで迫り、望月は思わず目をつぶった。下草の翳りも獰猛なこれを舐めなければいけないのか。山岸曰く、バックヴァージンを奪ってくれやがった実行犯たるペニスを。
生理的嫌悪感と怯懦の念と恨めしさ。それらがせめぎ合って総毛立ち、かといってひと舐めもしないうちから白旗を掲げるのはプライドが許さない。
大丈夫だ、爪や歯と同じ人体の一部だ、舐めても害はない。そう自分を鼓舞しているさなか、ペニスで頬を叩かれた。
小ばかにしたふうな表情を浮かべた顔を睨 めあげた。股間に視線を戻し、二、三回お世話になったことがあるアダルト動画を参考にして方針を決める。
両手で支えて固定したほうがやりやすい。なので、まずはそうした。
ままよ、とばかりに足の付け根に顔を伏せると石鹸の香りに鼻孔をくすぐられる。品行方正をモットーとしてきたのに、何が哀しゅうてフェラチオをする羽目になるのだ。
「最初はそうだな、ソフトクリームを舐める要領で先っぽをぺろぺろやってもらおっか」
望月は、素もぐりをする前のように大きく息を吸い込んだ。そして、おっかなびっくり舌を伸ばす。
これはソフトクリーム、これはソフトクリーム……自己暗示をかけながらひとしきり舌を遊ばせると、
「裏筋を舐め下ろしていって。で、根元に行き着いたら折り返して、先っちょをぱくり」
まだるっこしげに腰を揺すりあげられたはずみに、頂 がこじ入ってきた。
「……むぅ、んん、っぐ」
決死の覚悟で幹の中ほどまで口に含むと、ぐぐ、と勃ちあがった。喉を突かれてえずき、舌でくびれを掃く形になれば、デニムに包まれた内腿にさざ波が走る。
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