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第36話
どうやら、まんざら感じていないわけでもないらしい。だったら犯られた腹いせに、意地でも小癪な青年を屈服させてやる。
頬は山岸の形を映していびつに膨らみ、その頬の内側をすぼめて、きゅきゅっと引きしぼるようにして怒張をあやすと、
「ちょっとヌケてて負けず嫌いで、躾がいがある……もとい、可愛がりがいがある」
耳の後ろをくすぐられて、全身が甘やかにざわめいた。いつのまにかスラックスの中心はテントを張っていて、望月は精通を迎えたとき以上の衝撃にみまわれた。
勃つということは、こんな、おぞましい行為に悦びを見いだしているのか? 脳内でおかしな麻薬物質が分泌されているんじゃないのか……?
だがブルーチーズと同じで、先走りの味も慣れてしまえばまったりとコクがある。唾液にまみれて屹立はてらてらと光り、強めにすすると、山岸が躰をふたつに折って頭を抱え込んできた。荒い息づかいに髪がそよぐと、連鎖反応を起こしたように下着が湿る。
誠二……囁かれて、図らずもときめいた。仮にも年上を呼び捨てにするとはナニサマのつもりだ。顔をしかめつつも、いっそう濃やかに舌をつかいつづけること数十秒後。
「飲むのは許したげるけど口で受け止めて」
昂ぶりが脈打ち、熱い塊が出口をめざして唸りをあげる気配が伝わってきた。いわゆる喉ちんこを突かれて舌で押し返すと、容赦なく頭を引き寄せられた。
〝山岸の香り〟が強まり、官能の息吹がくゆりたつ。
腰が激しく揺れ、ソファの座面が波打つ。眼鏡がずれて頬にめり込み、鼻もひしゃげて、望月は苦しまぎれに強く吸いあげた。その直後、ねっとりとした液体が迸った。
マジに本気で本当に、口の中に放たれたのか。望月は目を白黒させ、だが呆然としている場合じゃない。
依然としてスラックスの前が窮屈であったためにガニ股で、それでも精いっぱい流し台に急いで吐き出した。
「あぁあ、律儀な望月さんなら飲んでくれるかもって期待したのに駄目かあ。がっかり」
「こっ、こんなもの飲んだら腹をこわす!」
白濁が排水口のぐるりでアメーバ状の模様を描くさまに眩暈に襲われ、にもまして、ねばねばする口腔をエタノールで消毒したい。
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