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第82話
カチャカチャという金属がこすれ合う音に血の気が引き、薄目をあけてみると、幅広で革製の手錠をはめられていた。
「……これは、いったいなんの真似だ」
「恋人に志願してくれたお礼に、俺流の洗礼を受けてもらおうと思って。ちなみに布を選んだ場合は、これで縛ってあげてた」
そう、うそぶいてロープの束を掲げた。
仰向けにベッドに突き転がされて、ヘッドボードに頭をぶつけた。望月は柳眉を逆立て、次いで唇を嚙みしめた。
告白してもケンもホロロにあしらわれるのが関の山、と予想していた。案に相違して好感触を得たといえるが、手放しで喜ぶわけにはいかない。
手首を口許に持っていき、バックルに歯を立てて手錠を外しにかかる。
だが山岸がひと足先にベッドに上がり、拘束しておいた両腕を万歳する形に顔から引きはがすとともに、望月の耳の両脇に膝をついた。そしてボトムをくつろげて自身を摑み出しながら、顔面に騎乗する寸前まで腰を落として曰く。
「チョコバナナで練習した成果をみせて」
「これが洗礼……なのか?」
呆然と呟いたあとで、図太さが際立つ顔を睨 めあげた。一拍おいて、ごくりと唾を飲み込んだ。
男としてこれほど屈辱的な構図は滅多にないわけだが、逆に闘志が湧く。この試験に合格した先には、薔薇色の未来が待っているかもしれない。ならば年上らしく器が大きなところをみせて、山岸を唸らせてやろう。
意気込みとは裏腹に、ためらいが先に立つ。口を真一文字に結ぶと、これは序の口だというふうに穂先で唇を掃きたてられた。
生理的な嫌悪感をねじ伏せて、唇の結び目をゆるめる。記憶をたぐる。たしか山岸は、いわゆる裏筋を舐めあげられるのが好きだったはず。
早速、そのポイントに舌を這わせる。ただし手錠をはめられているせいで、ねぶりやすいようにペニスを捧げ持つにも難儀する。
「へえ……特訓しただけのことはあるね」
じわじわと雄が頭をもたげて舌を押し返してくる。手応えを感じると奮い立ち、流線型のラインを丁寧についばむ。
他方、濡れたワイシャツが肌に張りつくと、あえかに尖りはじめている乳首の影が浮き出た。
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