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既成事実 2

 告白された時に、陽に報告するようになったのは最近のことだ。告白したとかされたとか、惚れた腫れただのはすぐに広まる学校だから、そのうち陽の耳にも入るだろうし、かと言って積極的に聞かせたい話でもなかったから今までは黙っていた。  けれど、数週間前、きっちり断ったはずの男が留守番中の陽に俺の恋人だと偽って家に上がり込んだことがあってからは、伝えるようにした。男もまさか陽が信じるとは思わなかったんだろう。俺が家に帰って顔を見た瞬間、土下座してひたすら謝っていた。  何もなかったからいいが、もし陽に何かあったらと思ったら血の気が引いた。それからは『きっちり断った』という結果も含めて陽に全て話すようにしている。 「清宮くんは『学園のマドンナ』なんだって。あと、この前の秋澤くんは『バスケ部の恋多き姫』。有馬くんは『図書館の妖精』。信濃さんは『清女の王子様』だって優介くんが言ってた」 「……優介って、そういうの好きだよな」 「面白いよねー。おれもそういう風に呼ばれてみたいなー。強そうだし、かっこいいなー」 「ははは……」  思わず乾いた笑いが溢れる。  陽はマイペースというか、他人の評価を気にしない。自分の時間を丁寧に生きているから、噂や流行にも惑わされない。俺が誰にいつ告白されたかってことも、学校中が知っていることだけど、陽は俺が伝えるようになるまで全然知らなかった。  だから、きっと、自分が『難攻不落の城』なんて、呼ばれていることも知らないんだろう。

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