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高校三年生

 学校が始まり三年生になると一気に受験生の枠に嵌められるようで、ほんの少し息苦しくなる。同時に文化祭の準備も徐々に本格化してくる。文化祭実行委員長になっている弘は、会議やその準備が増えて拘束時間以上の考える事の多さに、今からこれで大丈夫なのかと頭を抱える。今迄頼っていた茂は、生徒会長に就いていて弘以上に多忙だった。  一方京も卒業までに取っておきたい資格がいくつかあり、バイトの隙間も試験勉強で忙しそうだ。時折一日の終わりの時間にオンラインゲームで遊ぶ習慣は続いていたが、誘ってもお互いに寝落ちてしまい、朝になってメッセージに気付く事もある。残念には思うけれど、以前の様に、京の一挙手一投足に振り回される事は無くなった。変わらずに京は『好かれたい相手』ではあったけれど、物理的な距離と彼女の存在が弘の気持ちに自然とブレーキを掛ける。更に自身の多忙さが追い打ちとなって、恋心だけにかまけている余裕がないのも良かった。  自身を慰めた後は酷い自己嫌悪に陥るけれど、直接会う事はほとんど無いので電話さえ取り繕えば気まずくもならない。時折襲ってくる虚しささえなんとかやり過ごせば良いのは楽だった。そう思っていたはずなのに――。  忙しさと嫉妬の反動か自身を慰める妄想は激しく積極的になってゆき、窓ガラスが次第に排気ガスで曇っていくみたいに、キラキラ輝いてた京への『好き』が劣情で曇っていくようだった。  妄想の中で、中学生の小さな身体のまま抱かれる事もあれば、自虐的に見た事すらない京の彼女に成り代わる事もある。ひたすら京に尽くして奉仕する事もある。最初は抵抗があった今のままの姿で愛される事も次第にタブーでなくなった。彼女との情事を思い描いてそこから奪い取る、京に迫って凌辱するように抱かせる――。  直接的で、根底に劣等感と嫉妬があるからこそ妄想は激しさを増した。自己嫌悪に陥りながらも『受け入れたい』欲求は収まらず、弘は京と再会してからは後庭を弄りながら自身を慰めるようになっている。  以前付き合っていた時も触れ合いたいと思っていた。京はどんな身体をしているだろう、どう触れるんだろうと思い描いて自身を慰めた事もある。けれど今は――。学校では聖人君子みたいな顔をして、一人になったら以前よりずっと強く『抱かれたい』とそればかり願っている自分が信じられない。  誰にも言えない、と思う。だけど虹也と話がしたかった。

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