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その日 4
じっと見つめられたまま脇腹をするりと撫でられて、弘がビクリと飛び上がる。
「ぁっ……」
ズボンからシャツを引き抜いて、温くしっとりとした手が直接肌に触れる。素肌に触れられて思い出した様に「お風呂……」と弘が呟いて京がフッと笑った。
「今更?」
「だって……、んっ、緊張して、忘れてた、から……、っ」
「弘は入ったでしょ? 髪、いい匂いしてる」
京が首筋に顔を埋めて、弘の匂いを堪能する。
「っ、ぁっ……」
「首? くすぐったいの? 俺もシャワー浴びて来てるし、後で一緒に行こう」
「首、や……」
覆い被さった京が腹を撫で胸の突起を探しながら、わざと首筋に唇を寄せて話す。
「んんっ、首やだって……」
「弘は首が好きかぁ」
そう言いながら京がペロリと首を舐め弘が飛び上がる。
「こっちも見つけた」
首にばかり意識のいっていた弘は、胸の突起を探り当てられコリコリと捏ねくられて、再び身体を仰け反らす。
「こっちも、好きなんだ?」
含み笑いをして囁く京の声が頭に響く。
「そ……ゆの、言わないで、よっ」
「恥ずかしくて興奮する?」
「もっ、やだって……」
耳朶を舐められ、直接耳に囁かれて弘は涙をにじませる。
「何で? 確認しないとさ、わかんないじゃん」
思いがけず真剣な声音に、ピタリと弘の意識が留まる。
「……ずっと後悔してた。何で言わなかったんだろう、聞かなかったんだろうって……。俺はもう弘との事で後悔したくない。……俺は、弘が好きだよ。弘は? 弘は俺が好き?」
「すきっ……」
弘はそう言って、中途半端な格好のまま京に抱き付く。京はシャツの中に忍ばせていた手を引き抜いて、あやすように弘の背を抱く。
「好きだよ、京が好き……」
胸の中に凝っていた気持ちが、言葉と涙になって溢れ出す。涙声に気付いた京が、弘の睫毛についた涙を舐め取り、シャツに手を掛けて問いかけた。
「服、脱がせてもいい? 直接、触りたい」
「ん……。僕も、触りたい……。京も……」
そう言って、二人で互いの服を脱がせ合あう。震える弘の手はベルトを上手く外すことが出来ず、そんな所も愛しいと思いながら、京は弘を手伝った。
弘は興奮して勃ち上がった自分を他人に見せるのは初めてで、期待している事を知られる恥ずかしさに震える。けれど、同じように勃ち上がって主張する京に堪らない気持ちになった。
──京も、同じように感じていてくれたら嬉しい。
そう思って、隠せない昂ぶりに手を伸ばす。
「んっ」
微かに京が呻いて、クスリと笑う。
「……何?」
「最初に、そこなんだと思って……」
そう言われて、恥ずかしさに血が昇る。確かに、胸筋とか、抱きしめるとか、他にもあるだろうに、あまりに直接的な自分の欲望が恥ずかしい。咄嗟に離そうとした手を捕らえられ、弘自身も、京のもう片方の手に捕らえられる。
「あっ」
触れられて驚き、声が出る。弘は自分のやけに高い声に焦った。
「可愛い声、出た……。触られるの、初めて?」
やけに嬉しそうに聞かれてコクリと頷く。恥ずかしさに消え入りそうになりながら『まぁいいか』と思う。京がいいと思ってくれるなら、何でもいい。
「こっち。もっと、くっついて」
導かれて、胡坐をかいた京の上に足を開いて座る。
「こう? ……これ、恥ずかしいよ……」
「恥ずかしい事してんじゃん」
「そ……だけ、どっ」
まじまじと見られ、触れられて、声が跳ねる。
「弘、やーらしい……。先、もう溢れてるよ?」
「あっ、やだ……、ん……、そんなに、見ないでよ」
「だぁめ。ほら、弘も……、触って?」
促されて、京の逞しい昂ぶりに再び触れる。
「ん……、これで、おあいこ」
そう言って、唇を重ねる。何にも支えられない上半身は、自ら進んで口付けに応えなければならず、京のせいにして言い訳する事を許さない。
積極的に求められ、それに自ら応える事で官能の密度が増す。お互いの口腔に直接吐息を送り込んで、無心に快感を追いかける。
「あっ、だめ、……っ、すぐ、イっちゃう。ね、もう出ちゃう、って……」
触られて、キスをして、直ぐに昇りつめそうになる。
「もちょっと、がまんして」
「だっ、ん……、も、無理、だって……」
扱いていた手を止め、きゅっと根元を握られる。
「あぁっ」
昇りつめるのを阻止されて射精できないのに、解放するような浮遊感があってクラっとする。ビクビクと弘が跳ねて「も、イきたい……」と懇願すると、手の中の京がピクリと反応して一段と張りを増す。
「俺も、触られるの、久々だから……ヤバイ……」
ハァっと息を吐き、京がいつもと違う切羽詰まった声で囁く。声が直接脳に響くようで、それだけで弘は達しそうになる。
「一回出しちゃおっか……。ん? 弘、いい?」
色っぽい声に抗えずにコクコクと弘は頷く。
「も、出したい。ね、あっ、ぁっ……」
「弘も、やって……。一緒にイこ……」
キュッキュと扱かれ、同じようにしてとねだられる。けれど、弘は自分の快感に手一杯で、握るだけで上手く手を動かすことが出来ない。
──初々しくてもどかしい、その仕草もすごくそそるんだけど……。
だけどそれじゃイく事が出来なくて、京は弘の腰を抱き寄せて密着させると、弘の手の上から両手で自分と弘を握り、一気に扱き上げる。京自身の熱と、ぎこちなく握るだけの自分の手と、京の手と……異なる全ての刺激に、弘はあっという間に昇りつめた。
けれど弘が欲望を解放してもまだ京は終わらず、そのまま刺激され続ける。一度達して、だけど力を失いきらない自身から、手の動きに合わせて残滓が扱き出される。トロトロと垂れ流す快感の名残がそのまま自身と京の手のひらを伝い、ぬるぬるとした感触を足した。
「……ぁ、んんっ……」
手の中の京自身がドクリと大きくなって京が息を張り詰め、欲望を解放する。ビクビクと京自身が震えるとそれに合わせて白濁が飛び散る。手のひらと、弘の胸にも飛んだそれは熱くて、京の熱をそのまま伝えるようだった。
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