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3 大学編 7 冬‐② ※

 真冬のベランダはさすがに寒いが、のぼせ切った体にはちょうどいい。凍てつく空気が神経を冴えさせる。月が沈んだ夜空は澄んで、星影がちらちら瞬く。   「あぁん!」    上は着込んだまま、下だけ露出してバックで挿れた。瑞季の着物の裾が垂れ下がってくるので、捲り上げて帯に挟んでしまう。   「瑞季、しー」 「んぅ、ごめ……」    目の前に広がるのは雑木林だが、誰が通りかかるとも限らない。そうでなくともお隣さんや階下の人にバレる危険性はある。   「しゅ、や、やっぱりやめ……」 「今さらやめらんねぇ」 「あんっ!」    深いところを突くと、瑞季はビクビクと体を震わせてベランダの欄干に縋り付く。こっちに向いた白い尻もビクビク波打つ。   「瑞季、声」 「あぅ、ごめ、なさい」 「静かにしてれば大丈夫だよ。電気消したし、外暗いし、人も全然通らないから」 「でもこえ……っ、がまん、できな……ぁあっ」    前言撤回。寒いのに暑い。いや、熱いのか? 北風は氷みたいに冷たいのに、頭も体も一向に冷えない。瑞季も俺と同じだろうか。瑞季の吐いた息は雪煙のように朦々と舞い上がり、寒々しく露出した尻や衿元に覗くうなじからは白い湯気がふわふわと立ち昇っている。   「ぅあ、そこ……」 「ここ?」 「んん゛ッ……そこ、だめ」 「イイってこと?」 「ちが……やっ、んん……」    気合入れてピストンしたらあっという間に果ててしまいそうだったので、瑞季の弱いところを重点的に責めて先にイカせる作戦に出た。カリ首を前立腺に引っ掛けるようにし、細かく腰を揺すって何度も擦り上げる。逃げる腰をがっしと掴んで、執拗にそこばかりを狙う。   「や、だめっ、そこばっか、だめぇっ」 「瑞季ぃ、声我慢して」 「むり、も、むりぃ、あっ、やぁあっ」 「イキそ? 中でイク?」 「わか、んな……あぅッ、もだめ、いや、いやッ、またくる、く、きちゃ――」    俺は咄嗟に瑞季の口を塞いだ。湿った吐息が掌を舐める。途端に中が激しく収縮し、イッたんだなとわかった。搾り取られるような強烈な刺激にくらくらして、もう遠慮せずに奥までガツンと突き入れた。    三擦り半で射精感が込み上げたが、そういえばゴムを着けていないことを思い出し、ギリギリのところで耐えて引き抜いて、瑞季の尻に大量の白濁をぶち撒けた。我慢し続けた末の射精は長くなかなか終わらなかったが、最後の一滴に至るまで余すことなく瑞季の尻に擦り付けた。    そうされている間にも瑞季は腰を痙攣させ、かすかな嬌声を漏らしていた。一度も触っていないのに、前からはぽたぽたと粘液が垂れる。生まれたての小鹿のごとくふらふらとしゃがみ込んだが、それでも膝の震えは止まず、ベランダの壁にもたれて胸を上下させている。息か湯気かわからない白いもくもくしたものが静かに空間を包む。   「……除夜の鐘だ」    どこからともなく、鐘を撞く音が響いてくる。荘厳な雰囲気で、もしかするとずっと前から鳴っていたのかもしれない。煩悩まみれのまま年を越してしまった。   「瑞季、立てる? 部屋入ろう。風邪引くよ」 「しゅ、や……?」    こちらを振り向いた瑞季の色香にぎょっとする。どろりと蕩けた瞳、艶っぽい唇、雄の情欲を掻き立てる恍惚の表情。淫乱というにふさわしい、発情しきった雌の表情。匂い立つほどの官能。   「ど、して……なか、くれないの……?」    駄目押しにこの台詞。俺に全てを食らってくれと乞うている。こんな状況で、我慢なんてできる者がいるだろうか。    瑞季を勢いよく抱き上げて部屋に戻った。適当に布団を敷き、少々乱暴に瑞季を押さえ込む。   「お前、もうどうなっても知らねぇぞ」 「ふぁ……? あっ!? や、ぁ、また、はいって……!」 「お前が、ほしいって言ったんだぜ。俺のこれ、ほしいんだろ」 「あ、んぅ、ほし、ほしい」    達したばかりなのにどうしてこんなに簡単に昂ってしまったんだろう。俺の体、おかしいぞ。セックス依存か?  瑞季の体もおかしい。真冬のベランダにいたのに、火傷しそうなほど熱い。ずっとイッてるみたいに中がきゅんきゅん締まる。   「どこがいい? ここか? それとももっと奥?」 「おく……ぅ、おくがいいっ……」 「こう?」 「あぁんッ! いいっ、きもちいいっ! もっと、もっとついてぇっ、おくにきて……!」    密着した状態で我武者羅に腰を振る。奥がいいと言うからひたすら奥を突き続ける。律動に合わせて瑞季の体が突き上がる。だらしなく舌を出して喘ぐ。押さえ付けていた両手の指が絡み付く。    なんだかわけがわからなくなる。狂おしいほど強烈な快感が稲妻のように駆け抜けていく。一度出したから少しは持つかと思ったがそうでもない。すぐにでも出したい。今度は中に出したい。   「みずき、もうで……出す、出すぞ」 「うん、うんっ、ちょうだい、なかにいっぱい、きて、だして……!」 「ああ、ぜんぶくれてやる、ぜんぶ飲めよ」 「んん゛、おれもイッ……しゅうやぁ、いっしょにいって、っしょに、いきたいッ」    瑞季のいじらしいお願いは叶い、俺達はほとんど同時に絶頂へ至った。どろどろに溶けた胎内に大量の欲望を叩き付ける。確実に種を植え付けるため、小刻みに腰を揺すって奥の方へと染み込ませる。瑞季も俺の動きに応えてくれ、濃密に蕩けた肉襞が種を一滴残らず吸い上げてくれた。    息も絶え絶えに、瑞季の上へ覆い被さる。心臓がバクバク胸を打って収まる気配がない。瑞季も忙しく息をしながら、ぼんやりと遠くを眺めている。俺は再度催した。   「……んぇっ!? あ? ま、また、おっきくなって……!?」 「ごめん、もっかい」 「ひぁ、む、むりぃ、も、いったから」 「ほんとにイッた? なんも出てねぇじゃん」    起立したままのそれに軽く触れると、瑞季はか細い悲鳴を上げてシーツを握りしめる。中が激しくうねり、前からはとろとろと力なく精液が流れ出る。射精を終えてからも、ビクンビクンと体を震わせる。   「はっ、も、いった、いま、いっ……」    瑞季が生理的な涙を浮かべて切実に訴えるが、俺は構わず抽送を始める。瑞季が逃げを打ってうつ伏せのような姿勢になるので、俺はその持ち上がった片足を掴んで引き寄せ、結合部をぴったりと密着させた。互いの足を交差させるような形で挿入する。この体位はなんというんだったか。思い出せないけど気持ちいい。奥の肉壁が吸い付いてくる。   「あ、ぁあっ、ふ、ふかい、んやッ、ふかいぃ……」 「すげぇいい、はぁっ、きもちいい……これ、奥の、なんつーんだっけ。ポルチオ? 男にもそんなのあるんだっけ」 「しら、しらなぁあッ、もうや、やだぁ、そこやめ、」 「奥いや? じゃあこっち突いてやる」    腰を引き、前立腺を突く。さっきもしたからコツはわかっている。的確に一点を狙ってぐりぐりと擦り上げる。瑞季はまた出さずに達した。若鮎のように幾度も体を跳ねさせて悶える。それでも俺は止まってやれず、重ねて腰を打ち付ける。前立腺を引っ掻きつつ、最奥まで勢いよく穿つ。中に溜まっていた精液が掻き回され、空気と混ざって泡立つ。   「ひい゛ッ……もや、やら、あいく、まらいぐ、いっぢゃ、んぐうう゛ッッ――!!」    布団に突っ伏してシーツに齧り付く。背をしならせて善がる。肉体の曲線美がいやらしい。瑞季は気づいていないかもしれないが、突く度に前からとぷりと粘液が零れる。   「瑞季ぃ、今日何回イッた? 自分で覚えてるか?」 「んぇッ? さ、さん? ッ、さんかい?」 「さぁ、俺も知んねぇ。けど、たぶんもっとイッてるぜ」    暑くてたまらない。真冬なのに滝のように汗を掻いている。上着を脱いで裸になればいくらか涼しい。瑞季の、乱れまくってほとんど脱げていた着物もしっかりと引ん剥いてやる。汗を吸って湿っぽくなってしまっていた。    再び正常位に戻り、熱い素肌を密着させて腰を振る。中をぐちゃぐちゃ掻き回す淫らな水音が響く。瑞季の腰もくねくね揺れている。お互いのいいところを擦り合わせて一つに溶け込ませる。   「ぁあ゛ッ、あも、もういぐ、やら、あぅッ、やらぁ、いくのやッ、いやッ、い゛――んぅうう゛ッッ!!」    イキ癖のようなものが付いているらしい。イク時は引き攣るような変則的な跳ね方をするので、イクとかイカないとかいちいち宣言しなくても簡単にわかってしまう。でも、イク時にイクって叫ぶのは健気でかわいいし興奮するので好きだ。   「ひうッ、んうぅッ、もらめ、らめぇ、ゆぅして、あうッ、ゆぅしれぇ……ッ」 「お前呂律……何言ってっかわかんねぇよ。俺ももう出るから、あとちょっとだけ付き合って」 「ぅ、しゅ、しゅうッ、ちゅ、ちゅして、くち、ちゅう」    呂律も回っていないのに、一所懸命キスをねだる。俺達は固く抱き合って、濃厚な口づけを交わす。上も下もねっとり絡まってこんがらがって、俺と瑞季の境界線さえ曖昧になった時、俺は遂に頂点に達した。三度目なので量はないが、人生において最も幸福で、永遠のように長く続く快楽だった。    胎内に放った精が瑞季の絶頂を誘発する。常に連続して跳ねていた体が一際大きく痙攣し、ビクビクビクッと中が激しい収縮を繰り返す。一旦落ち着いたと思っても、何度も繰り返し脈打つ。その度に締め付けられて苦しかったが、だからといって抜き去る気にはならず、挿入したまましばらく抱き合っていた。

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