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由々しき事態である

俺は最近真剣に自分の今後について考えてる。 いや、もっと早くから真面目に考えろよ、と皆は思っているだろうけどさ。 クリスを騙して付き合っている事も勿論そうなんだけどさ? それよりも俺の見事なまでの流されっぷりに俺は本気で反省したいと考えている。 俺、なんで尻で気持ち良くなっちゃってんの? 「シェス? なんだ浮かない顔して。またクリスの事で悩んでるのか?」 ああ、テオ。 最近俺にはこのとても人には言えない悩みを相談できる相手が出来た。 実はテオも意外にも俺と似たような状況に陥っていたんだ。 「・・・テオは、ユーリと関係を終わらせたいとか、思った事ないのか?」 「・・・あるな? 身体だけの関係なんてそもそも虚しいだけだろ?」 だよな。 いや、クリスは付き合ってるつもりだからそんなつもり無いだろうけどさ? 俺は違うからなぁ。 これ以上は流石に駄目だと思うんだ。 でも、正直次求められたら俺許しちゃいそうなんだよ。 え?どうなってるんだ俺? 「あのさ、シェス。実は俺達・・・正式に付き合う事になったんだよ」 「ヘェ〜そうなのか、おめでと・・・え!?」 テオさん? 今なんて言いました? 正式に付き合うとは、誰と誰が? 「・・・ユーリと、ちゃんと恋人になったんだ。一応言っといた方がいいかと思ってよ」 え? もしかしてあの後一悶着あったのか? あったんだな? テオ、クリスとユーリが仲良さげな所を見て少し様子がおかしかったもんな? うっわ〜・・・それは、おめでとうと言うべきなのか・・・もう少しあのままでいて欲しかったような・・・複雑だな! 「テオは良かったのか? ユーリと恋人になっても」 あ、悪い。 こんな事聞いた俺が間違いだ。 そりゃそうだよな? 好きじゃないのにわざわざ同性と付き合ったりしないよな? ・・・そうだよ・・・。 間違ってるのは、俺なんだ。 「好きだって気付いちまったからなぁ。困るよな、本当」 そうか? 想い合ってるならいいだろ。 きっとそれなら、これから先どんな障害だって二人で乗り越えていける。 でも、俺は違うからな。 やっぱり、ハッキリ言おう。 「シェス? どうした?」 「・・・俺もハッキリさせて来る。このまま放置しておくのは、クリスに悪いもんな」 別れよう。 ちゃんと説明して、例えそれでクリスに軽蔑されたとしてもしょうがない。 最初から俺がハッキリ言わなかったのが悪いんだからな? あれは、ちょっとした悪戯で、本当はクリスの事を好きなわけではないんだって。 「シェス? 今日はやけに早いな? どうした?」 「話があるんだ。とても、大事な話」 「・・・今すぐか?」 「おう。今言わないと俺言えなくなりそうだからな」 なんだろ。 クリスの表情がやけに固い気がするけど、気のせいか? 「・・・じゃあ俺の部屋で・・・」 「いや、外でいい。裏庭に行こうぜ」 心臓の鼓動が速すぎて胸が痛い。 俺、ちゃんと言えるのか?これで。 でも、これ以上は本当に駄目だと思う。 「で、なんなんだ話とは」 「クリス・・・俺お前に嘘、ついてたんだ」 クリスの顔が見れないな。 俺、なんでこんなに怖いんだろうな? クリスはきっと事実を知っても怒ったりしないと思うんだよ。だけど、冷静に俺の言葉を聞き入れて、そのまま二度と俺の事を見ないと思う。 「俺、本当は・・・・」 「怒ってるのか? 俺が、あんな事したから」 そうじゃねぇよ。 だってあれは恋人同士ならおかしくはないだろ? お、男同士でだってセックスはするんだし・・・ま、まぁ強引ではあったけど、最後まではしなかったし。 「悪かった。俺も、ちょっと冷静さを欠いていたとは思う。シェスが、余りに・・・可愛くて」 「・・・・は?」 「嫌ならもうあんな事はしない。シェスが俺を受け入れられるようになるまで我慢する。だから、嫌わないでくれ」 な、何言ってんの? なんで俺がクリスを嫌うんだよ。 寧ろ嫌われるような事してるのは俺なんだけど? 「いや、そうじゃなくて・・・クリス、俺」 「キスするのも嫌か?」 だから、そうじゃなくてぇえええ(泣) 「い、嫌じゃ・・・ない」 「シェス」 いや、だから。 俺もキスされてウットリしてる場合ではない。 やっと決心して打ち明けようとしたのに! 俺のアホーーー!? 「好きだ・・・シェス」 「・・・クリス・・」 これは、もう既に手遅れな気がする。 そもそもクリスが俺の事好きになった時点で俺はゲームオーバーだ。 それに、ここだけの話、正直言うと俺もクリスの事好きだと思う。好きの種類はこの際深く考えないけど。 だから、こんな関係は・・・やめたい!! 「そうじゃない! そもそも俺、クリスの事、恋愛感情があって付き合って欲しいって言ったんじゃないんだ」 「・・・・シェス」 だ、よな。 そりゃ驚くし、傷付くよな? 「ゲームの罰でお前にあんな事言ったんだ。本当は直ぐに誤解を解くつもりだったんだけど、クリスが俺の言葉を真剣に受け入れたから、言い出せなくなって・・・」 「・・・じゃあ、俺の事は、なんとも思ってないんだな?」 違う。 違うから此処までこんな関係をズルズル続けたんだって思う。それに俺は、クリスを傷つけたくない。 「き、嫌いじゃないし、好きだけど・・・クリスが思ってるものとは、違うと思う・・・俺、このままこの関係を続けるのはいけないと思って・・・」 「・・・今更だな? あそこまでされて、お前よく平気だったな?」 ぐっ! へ、平気じゃねぇぞ! す、凄く恥ずかしい思いをした。 「・・・それで? 俺と別れたいのか?」 「・・・・・そっ・・・」 いやいやいや? 俺、何考えてるんだ? そうだよ。 クリスを騙してたんだから、別れるのは当然だろ? なんで、即答しないんだよ。 「お、俺・・・は・・・」 これは酷い。 この場面でそんな事、問われるなんて予想出来ていなかったのだとしても、此処で言い澱むのはない。 盛大な溜息が上から吐かれたのが分かるぞ。 当然だと思う。 「じゃあ、今度は俺が申し込む」 「・・・・は?」 「シェス。俺と付き合って欲しい」 誰でもいいから俺に正しい答えを教えて欲しい。 あと、なんで俺こんなに安心してんだ? おかしいだろ?

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