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取り敢えず恋人らしさを目指す事にしてみたら

突然ですが。 最近、クリスの様子が変わったと思うんだ。 「シェス、今度の遠征用に新しい革袋が欲しいんだ。一緒に見に行かないか?」 「いいぞ? 城下町か?」 「ああ、明日はお互い休日だろう? たまには一日中出掛けるのもいいだろう?」 一日中出掛けるのか? ふーん? まぁ、いいけど。 なんだか最近外で会ってばかりだな? いいんだけどさ。 「それが終わったら甘い物でも食べて帰ろう。いつもの店以外にも美味しい店を知っている」 「へぇ?そうなのか。それは楽しみだな」 最近クリス俺を部屋に呼ばなくなったよな? ケーキも、余り作らなくなったし。 なんでだろう。 誤解も解けて一応俺達正式にお付き合いしてるんだよなぁ? いや、だから別に俺は良いんだけどさ。 ・・・最近恋人らしい事、してないよな。 ん? そもそも恋人らしいとはなんだろう? 女の子と出かける時は相手の好きな物をリサーチして自前に店を調べたり、二人きりになれる場所を確保したりと色々動いてた気がするけど、その時だって恋人らしくどうとかって考えなかったなぁ。 「待たせたか? 」 「ん? いや、俺も今さっき着いた所だ。外で落ち合うのはそう言えば初めてだよな? いつも宮廷帰りに外出るくらいだもんな」 そうなんだよ。 だから俺、クリスの私服姿とか余り見た事なかったけど、クリスって小綺麗にすると、その・・・。 「なんだ? ジッと見て。何処かおかしいか?」 「いや。新鮮だなぁと、思ってさ」 「ああ、そう言えば休日に外に出掛けるのは初めてか。いつも部屋に呼んでばかりだったからな」 そ、そそそうだよ。 それで大体、甘いお菓子に惑わされて、そのまま雪崩れ込むスタイルだったじゃん? よくよく思い出して見ても俺達会う度にエロい事しかしてねぇよ! 確かにアレは問題だった! でも、でもさぁ? 「シェスの私服姿も新鮮だな。前から綺麗だとは思ってたが、その姿でいると女性に人気だというのも納得だ」 もう、かれこれ半月程何も無いんですけどー! ちょっとクリスさん本当にどうなってんの? なんなんだよ、気にしてるのは俺だけなのか? これじゃあ、まるで俺一人欲求不満みたいじゃねぇか。 ふざけんな!つまりだな! キスぐらい、したって良いんじゃね? 「お、コレなんかどうだ? 丈夫そうだぜ?」 「そうだな。だが、少し小さいな。生地はこんな感じが良いんだけどな」 クリスのキス、気持ち良いんだよなぁ。 今までの経験で一番気持ち良い。 同じ事してるだけなのに、なんでこんなにも違うんだろうな。的確に俺の弱い所を責めて来るんだよコイツ。 「じゃあコッチは? 生地は違うけどコッチよりは物が入るぜ?」 「・・・そうだな。もう少し見てみてもいいか?」 「ゆっくり探そうぜ。時間はたっぷりあるしな?」 待てよ。 一旦落ち着こう。 なんだか俺、変な方向に思考が引っ張られている気がする。 折角貞操の危機を免れているというのに、俺は何考えちゃってんの?いいじゃん? 別にしないならしないで俺は平和じゃん? あのまま続けられたら俺、絶対クリスの誘惑に抗えないよな? 俺、クリスは好きだけど尻の貞操は守りたい。 「お前、さっきから面白いぞ。それ、買うのか?」 「え? あ、いや違う!ちょっと一瞬考え事してて。ボーとしてたわ。悪い」 おっと!いけね。 考え事に夢中で手元にあった髪留め全部髪につけてたわ。 それにしても、髪伸びて来たな。 そろそろ切りに行こうか。 「だが、コレは似合うな。ついでに買ってやる」 「は?」 え? いや、いいよ別に。 止める間もなく買っちまってるけど、そもそも男が男に髪留めを贈るとか変だろ? その後、結局クリスは何も買わずに美味しいスィーツのお店に連れて行かれて、数人の貴婦人に絡まれつつ帰路に着いている訳だが。 「やはり馴染みの店でないところでは目立つみたいだな。疲れていないか?」 「疲れてねぇよ。クリスこそ疲れただろ?」 「少しな。俺は一人でいる時、女性に話しかけられる事なんてないからな?」 そりゃ、お前が怖い顔してるからだろ? コイツ俺の前だとよく笑うのになぁ。 「髪飾り、ちゃんと付けて欲しい。壊してもいいから」 「いや、流石に訓練中は・・・」 そもそも髪切ろうかと思ってんだよ。 それに、壊したら嫌だろ? 「壊れたら、また贈る。ずっと側に居られないからな」 クリスお前。 なんで彼女作らなかった? お前絶対俺より遥かにイケメン力高いよ! 貴婦人もメロメロだよ!でもって俺もメロメロだよ! 予想外すぎる! 「・・・お前、もしかして。意外と独占欲強い、とか?」 「さぁな。俺もこんなに長い間恋人がいた経験がない。だが、お前は特別だと思う」 あれ? これってまさしく恋人同士のやりとりじゃ? そ、それでこの後、定番の流れだと抱きしめ合ってキスとか、しちゃうんだよな? この流れは、そうだよな? 「・・・ク、クリス」 「シェス」 俺達恋人同士なんだから、まぁそれくらいはおかしくねぇよ。うん! 人もいないし、俺はいつでも大丈夫だ! お、来ますか? クリス久々にグイグイ来るのか? 「シェス・・・キス、していいか?」 き、来たーーーー!! 「お、お・・・・・」 「クリスぅうううう!!助けてくださぁーい!」 アイタァー! な、なんだ? コイツ。 いきなり俺達の間に割り込んで来たなオイ。 確か、クリスと同じ第一騎士団の・・・。 「パリス! 何処に行った! 隠れても無駄だぞ!俺から逃げようなんて百年早え!」 「え? ジェイダ? な、なんなんだ、アンタ」 「あ! えっと、クリスのエッロイ恋人さんですか?取り込み中 すみません!コッチも緊急事態なんで、ちょっとクリス貸して下さい」 「は、は? エロい? おい、クリス?」 「・・・待て、違う。俺は何も。パリス?一体なんの話・・・」 おいおいおい。 まさか第一騎士団の奴等、俺とクリスの事知ってんのか? も、もしかして、その。行為の内容とかも知ってんの!? 「あれ?もしかして人違いでした? 隣の部屋で声を聞いただけなので確かではないですけどって、だから、今はそれどころじゃなくて、ですね?」 う、嘘だろ? ま、ま、まさか今までの全部隣に筒抜け? アレが、全部? 「ま、待て! そんな筈ないだろ。あの部屋は壁が厚い・・」 「パリス!こんな所に。クリス!そいつをコッチに渡せ!」 「ジェイダ。お前はパリス相手に何をしてるんだ? 副団長が風紀を乱すな」 「乱してねぇ!俺は正式にそいつを恋人にしたいだけだ!」 「嫌です!お断りです!断固拒否!」 アレが、全部。・・・・ブチリ。 「・・・俺、帰るわ」 「シェス?」 流石男所帯。デリカシーねぇのな。 でも俺、そういうの結構気にするタイプだ。 クリス、お前実は面白がってたんじゃねぇの? 「俺、もうお前の部屋には行かねぇ。じゃあな」 「シェス!?」 「あれ?」 「お、おお?」 ハイハイ、道開けて下さいね? よくよく考えてみたら俺一度だってクリスにあんな事、して欲しいって言った覚えねぇよ。 全部クリスの一方的な行為じゃん? 騙されてたの俺じゃね? 「待て!シェス!」 本当に俺の事好きで大事だと思ってんなら、簡単にあんな事しねぇんじゃねぇの? うっかり騙される所だったぜ!ケッ!

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