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③
「安部さん、これ良ければどーぞ」
「え?花田さん?これ……」
「昨日クッキー焼いたんです!あまり上手に出来なかったんですけど…食べて欲しい、な…って」
「も、もちろん頂きます!」
会社について早々、事務の女の子からの手作りクッキー
しかもハート型だぞ?
(うわっ、めっちゃ嬉しいっ!)
こんな事今までなかった
それに通勤の時も、いつも座れない電車がなぜか座れたり
コンビニでは俺が好きなパンが半額だったし
今日はツいている!
と、思わずにいられない
『良い事がありますよ』
アイツの言葉がパッと浮かぶが
「安部」
「あ、はい!部長、何か…」
「お前が進めていた藤商事との商談上手く行きそうだ
先方から連絡があってな、話しをもっと詰めたいから時間があれば来て欲しいって言ってるぞ」
「本当ですか!い、今から行ってきます!」
急にどうしたんだよ、いやでも何でも嬉しい!
こんなにトントン拍子に話しが進むって初めー…
「げ!」
「どうです、玲二さん?百聞は一見に如かずの意味、分かりましたか?」
バタバタしながら会社を出て真っ先に目に飛び込んだのは…
「ニキッ、お前何でここにッ」
黒いスーツに身を包み優雅に立つニキ
しかもこうなる事を見透ししていたのか、その顔は腹立つほどの笑顔を張りつかせている
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