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第6話

「ふーん。きれーな顔して腕っぷしが強いってのもいいよねぇ」  レオンは楽しそうににやにや笑って聞いている。レオンもこんな顔してけっこう喧嘩っ早く、荒事に強いのだ。 「いやもう、ホントに祐樹の話はいいから」  なんだか余計なことまで話してしまった気がして、孝弘は強引に話題を変えることにする。 おとといのパーティを終えて、レオンは2日後には一旦、香港へ帰ってしまう。あとは店長を任された張東明(ジャントンミン)の采配によって店は運営されるのだ。  留学時代からもう5年のつき合いがある日本語専攻だった中国人店長は、日本へ留学経験があり安心して店を任せられる。 「ところで、西単(シータン)のほうの準備は進んでんの?」  北京の1号店は王府井から通り1本入った場所だった。2号店は西単に8月にオープンが決まっている。  北京の店はコンセプトを統一させておくことにしたので、基本的に1号店とすべて同じ仕様だ。王府井と同じくショッピングエリアなので、観光客相手のカフェと土産品を前面に出している。 「うん。1号店の準備がけっこう苦労したから、2号店はまあまあ順調だよ。スタッフの教育と在庫管理がやっぱいちばん大変かなあ」 「手工芸品だから、そんなに数作れない商品もあるもんな」 「うん。工場で大量生産してるわけじゃないからね。そうだ、松本美沙(ソンベンメイシャー)って覚えてる? 語言にいた留学生の」  北京語言学院にはちょくちょく遊びに行っていたので、友人知人はかなりいる。松本美沙は日本の大学を休学して1年の語学留学に来ていた学生だ。かわいい顔をしているが、豪快な性格で中国生活を満喫しているタイプだった。  語学留学を終えたあと日本の大学に戻ってそこを卒業してから、さらにこちらに留学してきたほど中国好きな女子学生だったはずだ。 「おー、覚えてる。松本(ソンベン)がどうしたの?」 「言うの忘れてたけど、スタッフに入ってもらうことになってて、来週からぞぞむに着いて現地研修の予定してる」 「あ、そうなんだ。現地研修?って工場か? ぞぞむに着いてって大丈夫かよ…。あー、いや松本は大丈夫だな、うん」 「うん。すごく楽しみって、辺境の村もぜんぜん平気だろうってさ。生産管理とか在庫とか、管理方面を任せていく気でいるみたい」 「そうか、いいんじゃない。小物とか女性目線が入ってくるとまた違うだろうし」  孝弘にとって、雑貨などはどれもさほど違いがわからない。ポーチ類やバッグなどは同じに見えるので、女性の友人に使ってもらって意見をもらうことも多い。

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