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第7話

「そういえばデザインも新しい女性スタッフ、入れたんでしょ?」 「ああ、俺の高校の同級生でテキスタイルデザインやってる子。日本から出たことない奴だけど、こっちの少数民族の布使うって言ったら、ぜひやりたいって向こうから連絡来たんだ」  同級生の間野歩(まのあゆみ)は日本で仕事をしながら、こちらのデザインにも加わってくれるという話になっている。  ぞぞむから聞いたところによれば、少数民族のテキスタイルでいずれ服や雑貨も作りたいという意向があるようだ。  ぞぞむが手掛けてきた両面刺繍や大きめのタペストリーといった高級路線の商品より、もっと身近に日常的に使える商品を作りたいらしい。 「あのようすじゃ、そのうち中国の現場に来たいって言い出すんじゃないかな」 「へえ、それもおもしろいんじゃない? 中国初体験が雲南省のうちの工場なんて」 「間野は日本人の普通の感覚の持ち主だから、こっちに来たらびっくりして卒倒するかも」  店舗を持つという話が出たときから予想していたことではあるが、取り扱う商品数やスタッフは3人で仕事をしていた時から大幅に増えてきていた。  レオンも元々は経理担当だったが、いまは経理的な仕事だけではなく、必要とあれば中国各地を飛び回っている。  新しい局面に来ているのだと、その忙しさで実感する。  レオンもぞぞむもじぶんも。仕事の面でもプライベートでも。ここからが正念場だと、気を引き締めなければと思う。  11時前に部屋に帰りついて、声が聞きたくなって祐樹に電話をかけた。 「もしもし」  声を聞いた途端、心のどこかがほっとほぐれるのを感じた。 「祐樹、俺」 「…うん」  その短い「うん」に、すべての気持ちがこもっていた。  うれしい、会いたい、大好き。 「何してた?」 「うちでテレビ見ながら、ビール飲んでた。孝弘は?」 「ぞぞむとレオンと会って、仕事の話してた」  祐樹の話をしたことは黙っておく。 「あ、全員、北京にいるんだ。ホームページの記事見たよ。北京でカフェ開いたんでしょ」  祐樹から櫻花珈琲を話題にされて驚いた。もう知られているとは思わなかった。  ネットはやばいな。いろいろ便利ではあるけど。

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