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第9話
「な。一緒にしよ?」
「え、でも…」
戸惑っている祐樹に、かぶせるように言った。
「じゃあ、そのまま布団に横になって?」
祐樹からの返事はない。
あきれちゃった?
こういうのは嫌だった?
嫌なら無理をさせるつもりはないが、じぶんばかりが飢えてるみたいでちょっとさみしい。
そんなことを思っていると「なったよ」と返事が聞こえた。すこしの間は布団を敷いていたのかもしれない。
「ありがと。じゃあ触って?」
「…どこを?」
孝弘が低い声でそそのかすと、祐樹は楽しそうな声を返してきた。一緒に楽しんでくれるつもりなのが声音から伝わってきて一気に体の熱が上がる。
ああ、やっぱり好きだ。
「俺が触りたそうなところ。肩でも鎖骨でも脇腹でも。声は抑えないで」
「うん。孝弘も触って。おれも声聞きたいよ」
「わかった。どこ触ってる?」
「脇腹からタンクトップのなか」
ハンズフリーにしたのだろう、さっきまでと声の響きが違っていた。確かに祐樹の声だけど、受話器を通したいつもと違う声にぞくぞくする。
「そのまま、上に撫でてって。胸触ってみて……、感じる?」
「んー。触ってるなって感じ」
照れ笑いを含んだ返事が返ってきた。じぶんで触っても性感はそこまで煽られないのかもしれない。
「じゃあ、下も触る?」
「うん」
孝弘もソファに座って、ハーフパンツと下着を下ろした。祐樹の声を聞いただけですこし反応している。そっと手のなかに包みこむ。
ここしばらく忙しくて、じぶんで触るのは久しぶりだった。
祐樹はどうなんだろう。
「どうなってる?」
「え、熱くなってる…、かな」
恥ずかしそうな声にますます煽られる。頭の中に、恥ずかしそうに頬を上気させた祐樹の顔が思い浮かんだ。
「ゆっくり手動かしてみて。気持ちいい?」
「……うん、ん…」
祐樹の声が変わった。
欲情のにじんだ恋人の声に孝弘の昂ぶりも一気に硬くなる。
「ぎゅって握って、全体しっかりこすって」
「ん。あ、気持ち、いい…ん。あっ……」
あー、やばいな。声だけって意外とくる。ため息のような息づかいが鼓膜を震わせて、脳に響いてくるみたいだった。
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