うお、さすが限定品だけあるな………いきなり倍の値段になってるじゃん。 　朝。 　ミオをソファに寝かしたまま俺は一人でパソコンを開く。 　昨日、予想だにもしないシチュエーションで自分の以下略が発射準備体制になったのは溜まっていたから、ということで納得する。 　そう、気が緩んだからああなったのである。 　これは自然の摂理であって、断じてアイツにコーフンしたわけではない、断じて！ 　そもそもアイツがあんなカッコしてるから悪いのである。女にしか見えない女装は反則だ。 　どうせ男なんだから俺の服でぜんぜん余裕なんだし、ちょっともったいないけどアイツと一緒に買ったコスプレの服だけでもオークションに出して売ろうと思ったのだ。 　そして、中でも極めて異彩を放っていた「ピンクのうさちゃんコスチュームセット」が、ロイド購入時のオプションのみでつけられた限定品だっただけにそれだけでもかなりの値で取引されている。 『あなたの可愛い恋人にうさちゃんコスはいかがですか？　伸縮性もあるので男の子にもＯＫ』 　ってあちこちで書かれてるってことはそういう趣味目的という人もいるんだろな………そう思いながら今度は以前からブックマークしている掲示板に飛ぶ。 　ここはいわゆるセクサロイド専用の大型掲示板で、自分の「恋人」のいろんな写真がアップできるところ。 　男性専用（持ち主の方）は自分の女の子に好きなコスさせたり、割とエッチなポーズさせたり一人でさせてたり、自分と絡んでるような写真を堂々とアップしていたりする。 　女性専用の方はと覗いてみれば、裸写真はあれど割と「おめかし」メインで、モデル並のセッティングやポーズだったり、女装もあったり、意図的に男同士で並ばせたり絡ませたり（……）したものもたまに見かける。 　まぁ、こういうのは必ず「板違いだカス」なんてコメントが載ってたりすんだけど。 　男の方は前からよく見てたし、アートみたいな綺麗な写真をあげてる人ももちろんいるけど、こう見るとつくづく男の方がやってることがえげつなく見えるよなぁ………。 　でも、もし俺のところにちゃんと「女の子タイプ」が届いていたら目的が目的だったんだから、似たようなことしてたかもしれないと思うと少し複雑になる。 　我が恋人の可愛さはどんな形であれ自慢したい、という気持ちはわかるし、そう言われれば、うちのミオだってきっと……… 　って、あれ？　なんか俺、変な方向に傾いてる！？ 　一瞬そう思うが慌てて頭をブンブン振って、それなのに未開の地、男同士専用の掲示板を恐る恐る覗いてしまう。 　セクサロイド本人の見た目は体育会系のムキムキマンもいれば、普通の青年風、そしてうちのアレみたいに女の子みたいな華奢な子もいたりする。 　ふーん、やっぱり男性同士でもいろんな好みがあって付き合い方があって、そこらへんは男女と変わらないんだな。 　と、ぼんやり考えながらスクロールしていたら、ある冒頭文に指が止まる。 『俺、なんか注文で間違えて男のセクサロイドが届いちゃったんだけど。。。』 　え？　俺と一緒じゃん。 『一瞬ワケわかんなくなってパニクって起動させちゃったんだよね。 　元々華奢なボディを選んでたから見た目は抜群に可愛いんだけど、胸がないのがやっぱイタくって。 　でももうめんどくさいし、こうなりゃヤケだと思ってヤッたら思いの外よくってｗｗｗ 　さすがセクサロイドだな、今じゃまったく気にならないよ。 　なんつーか、普段女に相手されないくらいなら自分のこと好きって言ってくれる男の方がマシって感じ。』 　最後の一文にはさすがにいただけないけど（事実、軽く「言葉を慎め」って批難されてる） 　それよりなによりなんだ？ 　………人ってこんなに簡単にホモになれるものなのか？ 　あげられてる写真は体操服にブルマー姿で確かに言われなければ女の子にしか見えない。 　ふむ、ブルマーねぇ………うちのアレも結構似合うんじゃ、ってなに考えてんだ俺はっ！ 　で、さらに「うちもそうだった」なんていうコメントがいくつかあったりして、間違いなく俺が買ったところと同じメーカーで「ゲイ生産会社」、と揶揄されてたり。 　気になって、俺もどうすればいいのか尋ねようにもけっこう前の投稿だし、ＳＮＳ的なアドレスも書かれてないから当人と連絡することも不可能。 　とりあえず、新規で俺も書き込みをしてみる。 『下にもあったけど、俺も間違えて男の子タイプを迎えたクチです（同じメーカー）。 　僕の場合は、返品しようと思ったんだけど転倒してうっかり起動させてしまいまして。 　確かに見た目は可愛いけれど、正直どうやってこれから付き合っていいかわかりません。 　同じ経験のある方、アドバイスを下さい（決してゲイの方を批判したいわけではありません）。』 　この時間帯ならまだ誰もコメントしないだろうなと思ってたら、さっそくひとつのレスがあった。 『写真をうｐ汁。あとスペックも。話はそれからだ。』 　しゃ、写真？　やっぱりそうくるか………仕方ない。 「おいミオ、起きろ」 「………………」 「オイってば、起きろよ」 「………………」 　遠くからソファに呼びかけてもミオは反応しない。 　あーもう、めんどくせぇなぁっっ！ 　ぶつぶつ文句をたれながら、俺はミオの方へ歩み寄っていった。