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ねっとでびゅーしてみよう。3/3

『一応見た目はこんな感じです。  ボーイッシュ系で性格は注文の時に書いたんですが、少し天然で甘えん坊です。  ところで最初撮影する時に、「カメラで○○(俺)の顔が見えないからイヤだ」といってなかなか笑ってくれなかったのですが、みんな最初はそうなんでしょうか?  撮影にとても苦労しました。』  写真と共に文章もアップして、とりあえず夜まで待ってみる。  メシ食ってひと段落、再びパソコンを立ち上げる俺の隣で、ミオはじっと様子をうかがっている。  なんか変なこと書かれてて、それを見たらミオがへこんじまうかも………文字読めるのかどうかわかんねーけど。 「ミオ、今日はもう寝ろ」 「うん………おやすみ、遼ちゃん」  ソファで寝たのを確認して、掲示板にアクセスする。 『ああ、ここにもゲイ生産会社の餌食が………ようこそ花園へ。』 『ちょwww 限定うさぎコスwww やる気まんまんwwwww』 『お迎えおめ。なかなかかわいいジャマイカ、大事にしろよ。』 『うちのはすぐに笑ったぞ。ただのノロケじゃねぇか( ゚д゚)、ペッ』 『さすがゲイ生産会社、造形は完璧だな、、、ツボを押さえまくってる。』 『ガタイ専の俺でも揺らめくよコレ。コスもかわゆいし何の問題もないじゃん!』  うわー、やっぱりあの服は失敗だったな………今さら顔が赤くなる。  でも顔とかスタイルとかの見た目に問題はないみたいでホッとする。 『間違えたんなら俺にくれよ! めっちゃタイプだ………裸エプロン着せたい』 『ぴんくのうさぎたん(*´Д`)ハァハァ』 『破廉恥なうさぎさんがいると聞いて飛んできますた』 『ものすごいエロい顔でフェラしそうだなw実にけしからんうさぎだwww』 『にんじん咥えさせて再うp!』 『久々のヒットwww ちょっくら抜いてくるわwwwww』  ───が。  盛り上がりに反して、なぜか俺のテンションは段々と下がってくる。  あれ? なんでこんなに俺ムカムカしてんだろ。  なんかコイツらムカつくんだけど……つか、そんな目でミオを見んじゃねぇなんて思ってしまっている。  いや、おかしいだろこの感情。  ミオは目的があって購入したセクサロイドで、しかも男だっつのに。  この感覚はまるで「自分の恋人」に対するそれと同じみたいなもんじゃん。  じゃ、やっぱり俺、このままホントにホモになっちゃうんじゃ……… 『マジレスだけど可愛いって思ってるなら、今はそれだけでいいんじゃないかな。  文章見る限りだとリセットして誰かに譲るつもりもない気がするし。  コスなんか着せるとかえって日常とのギャップで引くだろうから、普段着にしてやるといいよ。』 『俺も間違えて迎えた身。見た目にやられて起動しちゃったんだけど。  一緒にいたらそういうの関係ないと思ったよ。今は仲良くやってる。  男、女じゃなくて、最終的に自分に合うか合わないかになってくるもんだと思うし。』  ここにきて、やっとマトモなレスがちらほらと出てきた。  うーん、やっぱりそういうものなのか? でもなぁ。 『セクサロイドだからって即物的に考えなくてもいいんじゃね?  顔見えないから笑えないとか可愛いじゃん。うちのもそこまで言ってくんない。  多分、身体で相手に出来ない分、そういうところで可愛がって欲しいって思ってんだよ。  最初はルームメイトから始めりゃいいじゃん、頼れるのはオマエしかいないんだから。』 『なんかもう答えが出てる気がする。おまいさんノンケだからゲイになるとか思って戸惑ってんだろ?  本当に興味なかったら、リセットでもなんでもしてとっくに手放してるはず。  男と男がセックスするくらいそんな特別なことじゃないし、悩む必要なんてナッシング。  最初は戸惑うだろうけど、恋愛ってそういうもんだと思えばラクになるよ。』  ズバリというか、あえて考えないようにしていたことを指摘され、俺はまた戸惑う。  ………ん? あえて考えないように、ってことはもうほとんど認めてるようなもんじゃん。  でも恋愛、って言うのはやっぱりひっかかるしなぁ。  いずれにしてもずっと暮らすつもりなのだから、そこらへんの腹括りは必要なのかな。  友達でも弟でも、なんでもいいから。  と、とりあえず……… 「おいミオ、起きろ」  すっかり疲れてうさぎ姿のままでずっといさせていたミオを起こす。 「………おはよう、遼ちゃん」 「とりあえずこれに着替えろ」 「うん、…………」  俺は部屋着用にと注文以外に購入していた、赤くて細かい水玉の入ったパジャマを差し出す。  が、ミオは思ったほど乗り気ではない感じ。 「………なんだよ?」  やっぱ女向きのコスプレっぽい服の方がいいとか言い出すんじゃねーだろな。 「遼ちゃん、やっぱり今着てるこの服もダメなの?」 「は?」 「だって遼ちゃん、何着ても驚くばっかりで他に何も言ってくれないんだもん」 「…………………」  ………あ、なんか今、「こんなこと言いました」って言いふらしたい気分になった。 もうノロケだよな、ここまで来たら。  でもあそこに書き込むのはもうやめておこう………明日、お礼だけ書くとして。 「い、いや、今まで『これ着ろ』ってちゃんと指定してなかっただろ? だからだよっ」 「ホントに?」 「ホントだっつの! あ、これ見ろこれっ!」  俺はもうひとつの、青の水玉のパジャマを見せる。 「そっちはなに?」 「えっ? お、俺のだよ………よく見ろ、同じ模様だろ?」 「同じって? 遼ちゃんと僕、おそろいってこと?」 「そ、そう………おそ、ろい」 「遼ちゃん!」 「だだだ抱きつくんじゃねーよっっ!  わかったら早くこれに着替えるんだよ」 「うん」 「………き、気に入ったか?」 「うん! ありがとう遼ちゃんv」  満面の笑みにつられて最終的に俺の顔もほころぶ。  ホントは女の子に着せたかったんだけどなぁ………って、なに考えてんだ俺はっ!  って、いつのまにか逆になってるじゃねーかよ、俺!

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