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ふたりのやくそくをつくってみよう。2/5

 前をタオルで隠しながら浴室に入る。  ミオは言われた通り湯船につかり、なんかパチャパチャ手でお湯を叩いて遊んでいる。 「ねぇ遼ちゃん、」 「なんだよ」 「背中、洗っていい?」 「は? 自分のか?」 「違う、遼ちゃんの」 「いや、自分でやるから………や、洗うとこじっと見られても困るんすけど………」 「もう遼ちゃん、注文が多すぎる………」  と言いつつミオは黙ってお湯をパチャパチャとやっている。  で、さっそく背中くらいならよかったかもなんて思ってしまったり。 「ミ、ミオ………」 「なに遼ちゃん?」 「そのっ、背中だけ、なら………いいから」 「背中? 洗っていいの?」 「早く来ないと自分でやっちまうぞ?」 「待って遼ちゃん! 僕がやる!」  やっぱりうれしそうに立ち上がり、俺の後ろに回る。  あぁ、やっぱりこの瞬間が嬉しいのかなぁ、俺。  好意というか、コイツのことを悪く思ってないくらいはもう認めざるを得ないことなんだろな。  それはわかってるんだけど。 「遼ちゃん、こんな感じ?」 「んー………まぁ、そんな感じ」 「ねぇ遼ちゃん、」 「なんだよ」 「気持ちいい?」 「っっ………」  裸同士でそういうストレートな言葉はやめてくれっっ。  耳元で嬉しそうにキャッキャ言われるのもくすぐったい。 「あーはいはい、悪くないですよ………オイ、ちょっと、」 「なに遼ちゃん?」 「あの、同じトコばっか擦るんじゃなくて他のところも………」 「他のところってお尻とか?」 「ちげぇよっ! 背中の中の、上とか下とか横とか」 「…………………」 「っ、だからぁ、」  振り向いて目を見る。 「背中、全部。わかる? こう背中があったら上とか下とか横とか………」  空中で四角を作って教える。 「うん、わかった………こう?」 「そうそう」 「………ねぇ遼ちゃん」 「んだよ?」 「遼ちゃんの背中、筋肉がついててかっこいいね?」 「~~~~っっ…………」  フーゾクに来てんのかよ俺はっっ(行ったことないけど)。 「もっ、もういいからミオ、湯船に戻れよ」 「……………………」 「………だからぁ、」  もう一度振り向く。 「もういいから、湯船に、ね?」 「一緒に?」 「オマエだけ」 「うん、わかった」  あぁもう、めんどくさい。こういうのも目を見なくてもそのうち通じるんだろうけど。  ミオは湯船に戻るとさっき「じっと見られると困る」と言われたせいなのかまたお湯をパチャパチャやって時間を潰している。  あの目線にももう少し慣れてやりたいとは思ってるんだけど。

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