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ふたりのやくそくをつくってみよう。3/5

「おい、ミオ」 「なに遼ちゃん?」 「俺も入るからちょっと足曲げろよ」 「うん!」  前を隠しつつ指示するとやっとうれしそうな顔になる。  そして、体育座りとあぐらの中間みたいな形で向かい合って湯船につかる。 「狭いけど我慢しろよ、オマエが言い出したんだから」 「うん、そういうのは気にならないから」 「あーそう」 「ねぇ遼ちゃん」 「ん?」 「やっぱりお風呂って気持ちいいね?」  ほわほわした湯気の中で、ちょっと今まで見せたことのないような笑顔でミオが言う。 「ん? ………オマエ、そういうのわかるんだ?」 「わかるよ。温度っていうか、『あたたかい』ってのはわかる」 「ふーん」  やっぱよくできてんだな。 「だってそれがわかんなきゃ、遼ちゃんの肌の温度もわかんないでしょ?」 「………………」  それは余分だけど。  そしてミオはお湯の温度が気持ちいいのか、黙って微笑んだまま少し目を伏せる。  笑った顔とか、しょげたり少しおねだりするような顔とかももちろんそうだけど、「寝ろ」、つってから寝るまでに見せる、こんな感じの表情はやっぱりいいな、と思う。  計算づくっちゃ計算づくなんだけど、なんか幸せかみ締めてるように見えるんだよなー。  んで、幸せそうなその顔見てるとこっちもなんか癒されるっつーか。  今のところこういう形でしか、ミオはそれを感じ取ることが出来ないわけだし。  ………できればその顔だけを見ていたい、と少し思う。  さらに目の前でミオの顔を見つつ首元や肩や胸元なんかもつい見てしまう。  男特有のごつごつした感じはあるけど、腰とか強く抱いたら折れそうだよなぁ………細い手足もなんか守ってあげたいような気分になるし。  こないだ写真撮った時の四つんばいとかあとで見直したらやっぱいい感じだったし。  ………って、俺、今また妙なこと考えちゃってるし。  ま、まぁ、たまにはこうやって一緒に入ってやるくらいならいいかな………と、今考えてたことを払拭しようと少し足の位置を変えようとした時、  ピクッ、とミオが首をかしげる。  ………いや、かしげたというか、なんかちょっと角度を変えたような。  角度?  リラックスしててすっかり忘れていた。  角度って、まさか。  そのミオの伏せた目線を追っていく。 「ッ! 、オマエぇぇっっ!」 「な、なに遼ちゃんっ?」 「黙って何してるかと思ったらドコ見てやがんだっっ!!」  狭い風呂の中で、エビのように腰を引っ込め前を隠しながら叫ぶ。  てことは俺の以下略見て幸せそうな顔してるコイツ見て俺も幸せ感じててってあぁもうなんだよその構図はチクショーッッ! 「ごめん遼ちゃん、見えてたから見たくなって………」 「だからってなぁっ! ………いや、いいよ別に」  俺だって似たようなこと考えてたわけだし。 「遼ちゃん、」 「なんだよ」 「ごめんなさい、怒ってる?」 「いや、怒ってないよ………あのな、これは」 「遼ちゃん………」  引っ込んだまま説明しようとする俺をさえぎるように、ミオが身を乗り出しこちらに顔を近づける。 「なっ、なんだよ」 「遼ちゃん………」 「………………」  近づけたまま、じっと俺を見つめる。 「ミ………ミオ、」 「遼ちゃん………」  恐る恐る手を伸ばして、他の誰にもない染みのついた右手首を軽く握る。  ドキドキする。けど。 「……………ごめん、」 「遼ちゃん?」 「やっぱ………ごめん、」 「うん………わかってる」 「え?」  ピーー、カシャ。  尋ねようとするとミオの中から機械音がした。

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