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ふたりのやくそくをつくってみよう。4/5
「ミオ、わかってるってどう」
「遼ちゃん、僕これ以上長くお風呂入ってられないから」
「え?」
「あがっていい?」
「あ………うん、あ、ちゃんとパジャマ着ろよ?」
「うん、ありがとう」
「お、俺もすぐに出るし、そのまま待ってればいいから」
「………うん………」
俺の質問にはもう答えられない時間まで来ていたのか、ミオは目を伏せたまま浴室を出て行った。
幸せそうな微笑は一切なしに。
「…………………」
浴室に一人ぽつんと残されて呆然とする。
嘘だろ?
「わかってる」なんて………そこまで気付いていたなんて。
相手してやってないのもそうだけど………むやみに怒鳴ってるし、身体を思い切り反らすこともあったし………それは確かにそうだけど。
違うんだ。
俺がそんなこと言ってしまうのは、アイツが多分「わかってる」なんて思ってるようなことじゃなくて、あんな、ガッカリさせるようなことでもなくて今は。
今は、───俺も慌てて浴室を出る。
あれ?
リビングに行くとそこにいると思っていたミオがいない。
「えっ? ………ちょ、ミオ?」
家出? いや、ちゃんと待ってろって言ったはずだし。
あ。もしかして。
「………遼ちゃん………」
やっぱり。
風呂上がりで「待ってろ」つったらコイツならこっちを考えるよな。
ミオは俺の寝室で、ベッドの真ん中に座っていた。
けど、待ちわびた感じもなく、笑いもしないで名前だけ呼んでミオはうつむく。
「………何やってんだよオマエ、オマエが寝るトコはそこじゃないだろ?」
あーもう、なんでこんな言い方しかできないんだ俺は。
「遼ちゃん………」
「なんだよ………?」
仕方なく俺もベッドに座る。
「………オマエ、俺とその、シたいんだろ?」
「う、ん………でも、」
「オマエ『でも』とかさっきの『わかってる』とかってなんなんだよ?」
「………………」
「言わなきゃわかんねーだろ、ちゃんと言えよ」
だからこんな言い方したいんじゃない。
自分だって何も言い出せずにいるくせに。
こんなことを伝えたいんじゃないんだ。
そんなとこをわかってもらいたいんじゃないんだ。
「だって、わかってるの。遼ちゃんがなんかそういうこと嫌がってること。わかってるけどどうしてもこの部屋に来ちゃったの。
………僕は、遼ちゃんの嫌がることはしたくないのに………」
「………………」
ミオはうつむいたまま小さくつぶやく。
「でもこれ以外でどうすればいいかわかんないの。
どうやれば遼ちゃんが喜んでくれるか、僕、わか、んない………」
そう言って、ミオが初めて涙を落とした。
「………ミオ、」
「なに遼ちゃん?」
ああもう、そんな泣いてる顔で俺を見るな。
いつもみたいに笑って首かしげてくれればいーのに。
「…………………」
もう、ダメだ。こんなの、無理だ。
俺は意を決して、ミオの目をしっかりと見る。
「ミオ、俺………実はゲイじゃないんだ」
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