17 / 32

ふたりのやくそくをつくってみよう。4/5

「ミオ、わかってるってどう」 「遼ちゃん、僕これ以上長くお風呂入ってられないから」 「え?」 「あがっていい?」 「あ………うん、あ、ちゃんとパジャマ着ろよ?」 「うん、ありがとう」 「お、俺もすぐに出るし、そのまま待ってればいいから」 「………うん………」  俺の質問にはもう答えられない時間まで来ていたのか、ミオは目を伏せたまま浴室を出て行った。  幸せそうな微笑は一切なしに。 「…………………」  浴室に一人ぽつんと残されて呆然とする。  嘘だろ?  「わかってる」なんて………そこまで気付いていたなんて。  相手してやってないのもそうだけど………むやみに怒鳴ってるし、身体を思い切り反らすこともあったし………それは確かにそうだけど。  違うんだ。  俺がそんなこと言ってしまうのは、アイツが多分「わかってる」なんて思ってるようなことじゃなくて、あんな、ガッカリさせるようなことでもなくて今は。  今は、───俺も慌てて浴室を出る。  あれ?  リビングに行くとそこにいると思っていたミオがいない。 「えっ? ………ちょ、ミオ?」  家出? いや、ちゃんと待ってろって言ったはずだし。  あ。もしかして。 「………遼ちゃん………」  やっぱり。  風呂上がりで「待ってろ」つったらコイツならこっちを考えるよな。  ミオは俺の寝室で、ベッドの真ん中に座っていた。  けど、待ちわびた感じもなく、笑いもしないで名前だけ呼んでミオはうつむく。 「………何やってんだよオマエ、オマエが寝るトコはそこじゃないだろ?」  あーもう、なんでこんな言い方しかできないんだ俺は。 「遼ちゃん………」 「なんだよ………?」  仕方なく俺もベッドに座る。 「………オマエ、俺とその、シたいんだろ?」 「う、ん………でも、」 「オマエ『でも』とかさっきの『わかってる』とかってなんなんだよ?」 「………………」 「言わなきゃわかんねーだろ、ちゃんと言えよ」  だからこんな言い方したいんじゃない。  自分だって何も言い出せずにいるくせに。  こんなことを伝えたいんじゃないんだ。  そんなとこをわかってもらいたいんじゃないんだ。 「だって、わかってるの。遼ちゃんがなんかそういうこと嫌がってること。わかってるけどどうしてもこの部屋に来ちゃったの。  ………僕は、遼ちゃんの嫌がることはしたくないのに………」 「………………」  ミオはうつむいたまま小さくつぶやく。 「でもこれ以外でどうすればいいかわかんないの。  どうやれば遼ちゃんが喜んでくれるか、僕、わか、んない………」  そう言って、ミオが初めて涙を落とした。 「………ミオ、」 「なに遼ちゃん?」  ああもう、そんな泣いてる顔で俺を見るな。  いつもみたいに笑って首かしげてくれればいーのに。 「…………………」  もう、ダメだ。こんなの、無理だ。  俺は意を決して、ミオの目をしっかりと見る。 「ミオ、俺………実はゲイじゃないんだ」

ともだちにシェアしよう!