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おあずけぷろぐらむ 1/6
「ミ……ミオ、起きろ」
「…………あ、おはよう遼ちゃん」
強制おあずけプログラムを喰らってから翌日。
俺はいつも通り朝、ミオを起こす。
「あ、あのな、ミオ、」
「うん、遼ちゃんなに?」
「起こす時と寝てもらう時のキーワードなんだけど………、起こす時は『おはよう』、寝てもらう時は『おやすみ』に直すから」
簡略化した単語はマズイと思い知った俺はさっそくキーワードを変更する。
変更というか、デフォルトに戻したというか。
そしてお約束通り、ミオからカシャカシャと音がした。
「うん、オッケ、了解」
ん?
なんかリアクション違うくね? 気のせいか?
「そ、それから………『おあずけプログラム』のことなんだけど」
「うん」
カシャカシャッと音がして、ミオがじっと俺の目を見る。
「えっと………あの、その、………」
「おあずけプログラムのことだね。日数を変える? キーワードを変える? キーワードは、なんの言葉を変える?」
「あの………いや、………」
日数を変えてさっそく今夜に持ち込もうか。その前にキーワードを変えた方がいいのか。
あ、とりあえず解除が先、かな。
「日数とキーワードは覚えてる? 日数は今、『一週間』になってるよ。キーワードは、ロックが『ちょっと待ってろ』で、解除は『抱いてやる』だよ。」
「だっ、そ…んなっ………」
こんなところでいきなり「抱いてやる」をこれにしろって言うなんて恥ずかしすぎる。
それに加え、あまりにも事務的なコイツの口調に俺は尻込みをしてしまう。
「えぇっと………まず、その、に、日数を、」
「うん、日数を?」
「い、い、一日、にしてもらえないかな?」
「一日?」
「てゆうか今夜解除、とかできる?」
「うん。昨日のロックから二十四時間後に解除プログラムを起動させるよ。その時に僕が『抱いてくれる?』って聞くからね?
だからその時に『抱いてやる』って言ってね? それで解除されるよ。」
やっぱりその言葉は必要なのかよっっ(汗)。
「もし、その時にまたロックしたかったら『ちょっと待ってろ』って言ってね? そうしたら、また『一日』ロックされる状態になるよ。」
「わ、わかった。じゃあ、とりあえずそうしてくれ」
「とりあえずなんて言わないで、そうしていいの?」
「はっ、はい………そうして、下さい」
ピーー…カシャカシャ。
「おあずけプログラムの設定は、以上だよ。」
はぁーーっっ………思わずぐったりする。
ここらへんの融通の利かなさはやはりロイドと言わざるを得ない。
「んじゃ、俺また仕事行ってくるから」
「うん、わかった」
玄関に向かうとミオはやっぱりついてくる。
が、
「じゃ、行ってくるから、」
「うん、いってらっしゃい」
さっぱりとした笑顔でそう言うだけで、いつものようにおねだりをしてこない。
「あの………ミオ、」
「うん、どうしたの?」
「えっと、あの………」
いつもというか、今までなら目を閉じて顔を近づけるから、キス代わりに俺が人差し指で口唇に触れてやってそれが送り出しのサインになっている。
しかし、今朝のミオはその素振りを見せない。しようともしない。
「どうしたの遼ちゃん? 遅れるよ?」
「えっ、あっ、ごめ………じゃ、俺は行くから、おやすみ」
「うん、おやすみ、遼ちゃん」
とりあえずそう言わないと寝てもらえないからそう言い、俺は部屋を出る。
そして、いきなり昨夜発動した「おあずけプログラム」の脅威を思い知ったのだった。
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