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おつきみぱらだいす 2/2
もう浴衣は人様に譲ることは出来なくなったので(理由は聞いてくれるな)それは諦め、改めて着付け直して二人でベランダに出る。
「遼ちゃん、ねぇ、遼ちゃん」
「ん?」
「下のキラキラ光ってるの何?」
「あぁ、街並みだよ」
「まちなみ?」
ミオは眼下の街並みを指差しややコーフン気味にはしゃぐ。
「あの光ってるのいっこいっこに人が住んでて、その灯が灯ってるんだよ」
「おうちが光ってるの?」
「うちっていうか、電気だね。うちもついてるだろ?」
「へぇ~………」
そっか、ミオはまだ外の世界をまったく知らないんだっけ。
「きれいだね、遼ちゃん」
「いや、もっとキレイなのは上にあるよ」
「上? ………あ! 上もキラキラ光ってる!」
上の星空を指差すと、ミオはさらにはしゃぐ。
「あの上にもおうちがあって電気がついてるの?」
「いや、あれは『星』って言って、空で光ってるものなんだ」
「なんで? なんで光ってるの?」
「え? えーっと………確か、燃焼だっけ………いや、太陽の反射だっけ……………」
突然尋ねられるとすらすらと言葉が出てこない。
「たいようって何?」
「そ、それは………あ、外が明るい時あるだろ? あれはその『太陽』ってのが光ってて外を明るく照らしてくれてて………」
「その太陽は今どこにあるの?」
「あぁ、えっと、俺らは丸い『地球』っていうのに住んでいて、地球自体が回ってたり、太陽の周りも回っていたり………」
まるで子供に説明する父親の気分である。
ちっともロマンティックじゃない。まぁ、そんなガラじゃないからいいけど。
「あ! そうそう、そんなことよりもっ(汗)。えっとどこかな………あ、ミオ、あれ見てみ?」
「えっ? …………あ! でっかい星があるよ遼ちゃん!」
「いや、あれは『月』っていって………」
「つき?」
「そう、『お月様』」
そっか、もうすぐ十五夜かなんかじゃないか?
指を差した先にはほぼ真ん丸に近い月がぽっかりと浮かんでいる。
「お月様もきれいだねー遼ちゃん」
「ちなみにあのお月様は今は丸いけど半分になったり細くなったりするんだよ」
「えっ? なんで?」
「うっ………そそっそれはまた調べて詳しく教えてやるよ」
「遼ちゃん、」
「な、なに?」
「すごいね、遼ちゃんはなんでも知ってるんだね」
「………………」
にっこり微笑まれて少し照れくさくなる………あとまともに答えられない自分も恥じる。
「ねぇ遼ちゃん、」
「ん?」
「あのお月様はいつ半分になるの? 今なる?」
「今すぐは無理だよ。毎日少しずつ欠けていって半分になって、細くなって、また少しずつ膨らんで丸くなっていくのを繰り返すんだから」
「見れる?」
「ん? だからそのうち見れるよ」
「遼ちゃんと見れる?」
そう言い、ミオは少し淋しそうにして首をかしげる。
「………もちろん」
手を伸ばして、ふわふわの頭をくしゃくしゃと撫でると、ミオは嬉しそうにまた笑って、名前を呼んで俺に抱きつく。
「じゃ、今日はもう中に戻ろっか」
「うん!」
そのままキスしたい衝動に駆られたけど、さすがに誰が見てるかわからないし(汗)、ミオの手を引き、二人で部屋に戻った。
さて、もう一度抱き合…う前にネットで天体でも調べてみようか。
一緒に眺めながら説明できれば、もっと楽しめるだろう。
それはミオだけじゃなくて、俺自身もきっと。
そしてきっと。
コイツとの生活もいろんな感情が満ち欠けしたりして繰り返されるんだろうな。
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