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ろいどっくほすぴたる 1/6
セクサロイドのミオと暮らし始めてもうすぐ半年になる。
最初はもちろん戸惑いの連続だったけど、今ではまぁ仲良く暮らしている。
が。
「なぁおい、ミオ………、とにかく出てこいよ」
「や。」
「や、じゃねぇつってるだろ。ほら言うこと聞けって」
「………やぁだー………ぐすっ」
半年も共に生(性)活していると性格も癖もハッキリと浮き彫りになってはきたが、行動パターンも増えたせいか時にこっちがまるで予測つかないこともしでかすようになった。
………そんなわけでミオは今、クローゼットを勝手に開け中に入りこみ、服の中に紛れながら体を丸め、こちらを見つつずっとグズって泣いている。
「ほら、いいからこの薬みたいなの飲めっつの。そんなに泣いてたらオマエ、水もたくさん飲まなきゃダメなんだぞ?」
「やだ………僕、行かないもん」
「行かなきゃダメだつってんだろ、オマエのために言ってんだぞ」
そんな半年が過ぎようとしていたある日、コイツのメンテナンスのお知らせが来たのだ。
寝かせた状態で検査をして一晩で帰ってこられるもので、簡単にいえば人間ドックのようなもの。通称「ロイドック」とも言われる。
あとは任意で自分で好きな時に予約を入れてするものらしいけど、一番最初のメンテナンスだけは定められた期間内に絶対やらなきゃいけないと決められている。
あとは任意と言われているとはいえ、だいたい一年単位でみんな結局しっかりやっているらしく、俺自身もそういったメンテナンスの重要性はなんとなくわかる。
やっぱり、共に暮らすコイツにはずっと健康でいて欲しいし、そう考えれば自分の健康にだって自然と気を使わないと、という思いにも至ったり。
まことにもって、よくできた仕組みである。
ってことで先程、当日までに準備しておかなきゃいけないことを教え、説明をしただけなのにミオは途端反抗を示し、クローゼットに逃げ込んだ、というわけである。
やっぱコイツらでもこういう検査は「怖い」っていうイメージでも組み込まれてんのかな。
「だから何度も言ってるだろ、オマエはずっと寝たままで終わるし、一晩経てば、」
「や! 一晩も遼ちゃんのいないところに行くなんていやっ………ふえぇ………」
そう叫ぶと、またミオはぐしぐしと泣き出す。
てめぇコノヤロウそっちの理由か………いかん、一瞬顔がゆるんでしまう。
「っ、だ、だからオマエ、ずっと、その、俺といたいんだろ?」
「うっ………うん、ずっといたい」
「でもオマエが病気にでもなっちまったらいられないんだぞ? そっちの方がいいのか?」
「………やだ………ぇっく、」
「そうなる前に悪いところがあったら見つけて、ちゃんと治してもらえるところなんだよ」
「ひっく、りょおちゃ、んは………」
「何が? 俺だって具合が悪くなりそうな時はちゃんと病院に行くしだな、」
「遼ちゃんはっ………僕がいないの平気なの?」
「べ、別にそんなことは言ってねぇだろっっ」
泣き顔で見つめられるとやっぱりドギマギしてしまう。
「だっ…て遼ちゃん………三日もえっちしてくれてない………」
「っっ、そ、それはそうしろって案内に書いてあったからでっっ」
「昨日だってっ、一緒にお風、呂入ったのにっ………えっちしなかったっ! ………うぅーっ」
「バッ、バカッ………俺だって辛いんだよ、分かれよっ!」
こっちが何を言ってもミオは顔を手で覆い、いつまでも首を横に振って泣いている。
なにせこっちも初めてだから案内を見て驚くばっかりで。
検査を申請したあと、さらに詳しい案内が来ますよ的なハガキは一ヶ月前に来ていて、予約の日を決めて返信し、案内が来たのは十日前。
そこには当日までに準備しておくいろいろな説明が書かれていた。
この案内が来て以降は、新しいことを覚えさせたりキーワードや生活スタイルを変えたりしないこと。
二日前までには自己クリーニングさせて風呂にもなるべく入れておくこと。
前日に一緒に送られた錠剤らしき何かと共に二リットル以上の水を飲ませておくこと。
………そして、最低でも三日間は性交渉を控えること(ご丁寧に太字)。
生活スタイルを変えるなってのがひっかかって、「おあずけプログラム」を使うこともためらい、大抵のことは従順だからと前日まで説明しなかった俺も俺だけど。
こういう妙なところで頑固なのはどういう回路で出来ちまったんだか、ったく。
「とにかく! オマエが嫌だつっても行かなきゃいけねんだから。
………どうすんだ? 俺はもう寝るぞ? オマエはそこで寝かせていいのか?」
「や!」
「出てきて言うこと聞かなきゃ言うぞ? ………ミオ、今日はそこでおやs」
「いやだぁっ! 遼ちゃんっっ………!」
キーワードを言おうとしたところで、ミオはクローゼットから出て飛びついてきた。
「やだぁ………遼ちゃんいじわる言っちゃやだぁ………」
飛びついてさらに泣くミオの頭をよしよしと撫でる。
「心配するなってミオ、オマエが寝るまでそばにいるし、終わったらすぐに迎えに来てやるから………だからオマエが淋しがることは何もないっつの」
「………遼ちゃん………」
「で、帰ったら、またいつも通りの生活ができるから………なっ?」
「………いっぱいえっちしてくれる?」
「っ、す、するよ、大丈夫だから。とりあえずこれ飲めって」
「………うん………じゃあ飲む」
ようやく言う事を聞いてくれるようになり、ミオは錠剤と大量の水を飲む。
「遼ちゃん、………」
そして飲み終えるとやや淋しげにこっちをじっと見つめる。
「ん? なに?」
「今日は一緒に寝てくれる?」
「や、それは………」
「えっちしないなら僕、遼ちゃんと手をつないで寝たい」
「~~~~っっ………」
俺の方だって正直、三日何もないってだけで落ち着かないっていうのに………。
「遼ちゃん、………ダメ?」
「わっ、わかったよ」
「………遼ちゃん、」
手つなぎを承諾したというのに、コイツはまだ少し濡れたまつ毛で俺を見上げ、お約束のおねだり顔を見せる(いつまで経ってもこの顔には弱い)。
「な、なんだよ?」
「あとね、あのね、………ちゅーだけしていい?」
「いや、だからそれはっっ! いや、あの………え~っと、」
や、えっちがダメってだけだよな? キスくらいはいんじゃね?
「や、まぁ………うん、それはまぁ、別に、」
「ありがとう遼ちゃんv」
が。
嬉しそうにしがみついてきたミオの濃厚な接吻は俺の以下略へダイレクトに刺激を与え、悶々度MAXにさせられた状態でベッドにてミオとしっかり手をつないで眠る事になり。
頼りの綱である第二の恋人『右手』を恋人とつないでしまったことを激しく後悔するハメになった。
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