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執事と乳母と使用人
男性しかいない世界だから、乳母も男性、それは当たり前だ。
当たり前だが、だがしかし!!
こう、乳母はさ、フランソワーズおばあちゃん、みたいな(勝手なイメージ名)感じだろ!
見惚れるようなロマンスグレー、大人の魅力たっぷりな、乳母!
今は執事らしいけど。
「トルク坊ちゃま、お帰りなさいませ」
「元気そうだね、ワイス」
「坊ちゃまも益々素敵におなりです」
「その坊ちゃまは止めてくれないか?」
苦笑いしながら、トルクがこんな風に無防備に照れるのを初めて見た。
「ワイス、紹介するよ
私の伴侶、咲季だ。」
「初めまして、咲季です。」
良い印象になるように、精一杯の笑顔で挨拶をした。
肩を抱く手に力が入った。
「ほぅ、坊ちゃまこの方を伴侶にですか?」
「あぁ、そうだ。」
僕を上から下まで見て、ふむ、と息をついてから、手をパンパンと漫画みたいに叩くと、ドアの向こうから何人もの使用人が入り込んで来て、荷解きをしてその中から出て来たさっきの白い服やらをザクザクと切ったりし始めた。
「あ、の、僕、何か気に入らないことをしましたか?」
「咲季、心配しなくていいから」
トルクは優しく笑ってるけど、無言で挨拶も返してくれないワイスさんが怖かった。
挨拶は大事なんだから!
挨拶くらいしてよ!!
心は半泣きだった。
大勢で寄ってたかって切り刻まれた服が、いつの間にか腰に大きなリボンがついた半ズボン!の服に変わってた。
レースのベールが、帽子に変化していたり、ニーハイの靴下になっていたりと着せ替えられた。
「可愛い!!!」
「なんですか、この可愛い生き物は!!」
「やだ、トルク様、これ一番の収穫じゃないですか!!」
「可愛すぎる!!」
「目がが溶けるくらい可愛い!」
え、何この表現。
それに、使用人がみんなオネェっぽい。
「うん、一番可愛いね」
「ですな。
咲季様の小さな体に、この半ズボンが素晴らしい!!
お膝を出してしまっては、悪い輩のおかずにされてしまう可能性が高いので、そこは隠させていただきました」
「それ以外に普段着などもご用意させていただきました。
お兄様方からは下着各種、御父上様からは、お道具各種、そして私からは”お箸と先割れスプーン”を贈らせていただきます」
「な、にそれ、聞いてないよ」
「うん、内緒だったからね」
ダバダバと涙が流れた。
怖かったワイスさんは、優しい笑顔で私の坊ちゃまの選んだ方ですから、大賛成ですよって言ってくれた。
「賛成したのはそれだけじゃないですよ。
咲季様は、私にちゃんとご挨拶をしてくださいました。
怖かったでしょうに、精一杯の笑顔でね。
私が態と返事をしなかったのに、咎めるのではなく、まず自分の行いに悪いところが無かった聞いてくださいました。
そのような方が、坊ちゃまに害をなすわけがありません」
「そんな、じゃぁ、ちゃんと言ってくださいよ
僕、なんかやらかして、トルクといられなくなるんじゃないかって
そればっかりが怖くて、もう、一人は、ヤダよ」
トルクにしがみついて泣いてしまった。
「可愛い子ですね、トルク様」
「食べちゃいたいくらい」
「剥いちゃったらどんな子なのかしら?」
「きっと、どこもかしこも美味しそうな真っ白な子でしょうね」
「着替えるときは、全部剥いちゃいましょう」
使用人が怖い。
「真っ白で綺麗で可愛いぞ
食べたら、甘くて甘くて、とても気持ちいいんだ」
トルク!!
「すでにお召し上がりでしたか」
「あ、あの、その、もう、あの、汚しちゃうと困るから
着替えていいですか?
一人で出来ますからね、大丈夫ですから、覗かないでくださいよ?」
急いで衝立の向こうへ隠れて着替えようとしたけど、着替えが見つからなくて、結局、皆に寄ってたかった剥かれて新しい着替えを身に着けた。
「可愛かったわ。」
「綺麗だったわ。」
「小さくて可愛かったわ。」
「トルク様のが入るなんてすごいわよね」
「お尻壊れちゃうわね」
この人達!!
「それぐらいしておきなさい」
ワイスさんが諫めると、途端に綺麗に整列して洗練された動きになった。
「あの、ワイスさん
皆さんにありがとうございますとお伝えください。」
「はい、確かにお伝えいたします。
明日は、朝一番に御支度の為に来ますから、坊ちゃま、くれぐれも咲季様が立てないなんてことの無いようにお願いしますね」
「ん、努力する」
トルクが返事をすると、ワイスさんは使用人の皆さんを引き連れて帰って行った。
「凄かった、なんだったんだ。」
「すまないね、アレは私の母親の代わりなんだ」
まぁ、乳母と言うくらいだからそうなんだろうけど。
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