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成長って…半端ない

半年も経つと、立派な青年になっていた。 何事も無かったわけじゃな無かったけど、ほんの一瞬の出来事みたいに通り過ぎて行った。 「咲季お母様、マナイ叔父様と視察に行きますから  一緒に城下に出ませんか?」 後ろからいきなりぎゅうってされて焦った。 「シュリ!  視察かぁ、お父様は行かないの?」 「咲季ちゃん、トルク兄上はシャズ兄上に捕まってたよ。  多分、予算組をまだやって無かったんじゃないかな?」 またあのアホな会話しながらやってるんだろうか。 「シャズ兄上は、仕事したくないときは非常用の備蓄庫に逃げるからね」 「あぁ、あれですね。  やっぱり。  災害級の魔物が現れたって奴ですね」 「今回は三頭も現れたそうだよ」 くすくすと笑っていると、シュリがなに?って顔をした。 トルクそっくりな顔なのに、物凄い武闘派に育ってくれて、今日は視察とマナイ兄様の護衛を兼ねてるから、僕も誘われたんだ。 「じゃぁ、トルクに言ってくるよ。  多分、フロウもマロもあっちで手伝ってるだろうから。」 「じゃぁ、裏門で待ってるね」 この国は正面に真っ向から王城が建ち、まずは王族が武力行使をして国民を守る役目をしている。 だから、この王城を通らないと、国に入れない仕組みだった。 僕たちが城下へ行くときは、裏門を使う事になる。 国民や流通の為の商人なんかは王城の脇に作られてる、馬車が一台通れるだけの幅の道を使う事になる。 国内に素行のよろしくない人たちを入れないためと、犯罪になりそうな物の流通を抑止するためのシステムだった。 そしてそこにはロゲルの透過魔法が使われているので、申請された人数と合ってなければ当然検査官が立ち入って荷物を調べる。 これって、空港にある様な手荷物検査のシステムみたいだった。 それでも入って来てしまったりするんだ。 全てが防げるわけではなかった。 所謂特権階級の人が持ち込むと、一般の検査官はお手上げであった。 どこにでもいるんだよね、悪い貴族って。 王族がこれだけ強固なら、十分抑止力になると思うのに、国民はそれに甘えすぎてしまって、良くない状況が出ているそうだ。 ある程度の軍隊を編成して、内外に対して力があることを見せることはが狙いだって。 その部隊長をまだ半年にしかならない、シュリに任せようとしていた。 そのための視察をマナイがして、実地訓練も兼ねてシュリが護衛についていた。 ちなみに、僕が誘われた理由は、もし、シュリがダダを捏ねたり暴走したりしたら、叱る役目らしい…。 マナイって結構、悪どい。 城下に出ることをトルクに伝えたけど、ちょっと生返事な感じではあった。 余程仕事が溜まってるんだろう。 最悪、半年近くシャズは遊んでいたんじゃないだろうか? 想像しただけで、やばい気がした。 裏門に行くと、既に二人は準備万端で待ってくれていた。 「咲季ちゃん、可愛いねぇ」 城下に行くって言ったら着せられた猫耳付きのフードコートに、割と太目なハイウエストのパンツ、丈は短めでショートブーツと言う出立ちだった。 「咲季お母様、私はお母様と伴侶になるよ!」 これ、子供がママをお嫁さんにする!ってやつ? 「シュリには別の誰かが出来るからね」 まだ半年の子供だとこんな時は思い知らされた。

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