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暗部

城下は賑わっていた。 この国に来るときに寄った街みたいに、屋台が出てたりしていた。 マナイが視察に来たのは、公共事業として発注する仕事への適正な手数料で雇われているかを抜き打ち検査しに来たそうだ。 労働条件とかそう言うのもちゃんとしてる国なんだってこの国に来て一年足らずで、もっと知らなきゃいけないことがあるって気づかされた。 マナイは僕にシュリのお守りをさせるなんて言いながら、本当はこういった国の状況を教えてくれるつもりだったんじゃないかって、そう感じた。 公共事業は贈収賄の温床になりがちだから、それも見方や押さえるべき内容で、相手が隠していたりする事を追求出来るように、書類や実際の図面や数量をミニ来たんだった。 「咲季ちゃん、この国は力だけで押してるわけじゃないんですよ。  王族の力が強くてまずは最初の砦ですけど、  それを維持して、国民が生活をしていく為の基盤がより良くなければ、人は国を捨て土地を捨てて出て行ってしまいます。  国民がいて王族として存在出来るなら、王族は国民の為に働かなければいけないんです。  それを、シュリ、フロウ、マロに学んで欲しいと思っています。」 私の兄弟はそれを履き違えましたけど…と小さく呟いた。 何となく、トアのことは名前を出せなくなっていた。 どんなに平和に見えても、闇は存在していて、のほほんとしてる訳ではなかった。 繁華街の裏に行けば所謂そう言った性処理的なお店もある訳で…。 そこは当然ながらチンピラみたいな輩から、冒険者崩れのやくざみたいなのもいた。 「ここはこの国の闇の部分です。  必要悪と言うか、増え過ぎず、過度になりすぎないように粛清をしながら共存しています。」 間引くってことか。 必要悪だが、増えすぎてはただの悪になる。 だから、益虫でいる間は飼っていくと言う事だ。 その始末をする暗部が、王宮にいる使用人達なんだ。 こんなチビな僕でも客引きに呼ばれるくらい用途は広いみたいだった。 挿れたいだけの人が利用するわけじゃ無いからだとは思うけど、シュリにはまだ知ってほしくなかった。 「咲季お母様、ここは遊廓ですよ。  私も、連れてきて貰った事あります。  でも、お母様や、マロみたいに可愛い子はいないんですよ。  だから、意味ないなーって。  ロゲル叔父様が言ってました。  でも他の人達には必要なんですよね?」 「え!!?」 マジ?誰だよ?うちの子に!! 「シュリ、それ、咲季ちゃんには内緒だとロゲル兄上に言われてましたよ?  喋って良いのですか?」 マナイが頭を抱える様にして、シュリに注意した。 ここに来た事より、内密な事をペラペラ話した事が問題だと、マナイは指摘していた。 この先、策略や軍事機密などが出た時に、こんなに考え無しに話してしまう様では、隊長どころか、歩兵にすらなれない。 「お父様が、是非周りに広めて、身動き出来ない様にさせろと言っていましたよ。」 天真爛漫を装って、流布させてるのか。 ロゲル、終わったな。 と言うのも、最近、意中の人がいるらしいのに、遊びを止めないからだよ。 「咲季ちゃんも大概鈍感ですよね。  ロゲル兄上は、ずっと咲季ちゃんが好きだから伴侶を持たないのですよ。  それをトルク兄上も勘づいているから、シュリを使って貴方の耳に入れたんです。」 「え?意味ないよね?  僕はトルクと伴侶だし、何とも思ってないし。」 「だから、一人で慰めているんです。  トルク兄上も酷い牽制の仕方をしましたねぇ。  ロゲル兄上の気持ちを知れば、咲季ちゃんが警戒をすると思ったんでしょうね。」 そう言う駆け引きは分からないし、でもどんなに想われても、トルク以外は無理だから。 「そっか、でも、これまで通りしか僕には出来ないな。」 「それで良いのですよ。」 複雑な笑顔で、マナイが僕のフードを深く被り直させてくれて、小さな声で逃げるよと言った。 「咲季ちゃん、逃げるよ。  雑談を楽しくしてる風にしてね。」 後ろにいる誰かから逃げるのだと察した。 「シュリ、深追いはしなくて良いけど、足止めは確実に。   私たちが逃れたら、お前は上に逃れなさい。  そのまま王宮へ跳べ、出来るだろ?」   「はい、マナイ宰相。  お任せください。」 そう言うとシュリは後方へ駆け出し、僕達は路地から逃れる様に走った。

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