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第4話

 今思えば、ただ漫然と過ぎていく日々に、刺激を欲していたのかもしれない。  最初はかなり警戒しつつも、徐々に心を開いていった航太の様子は、どんな攻略ゲームよりも伊織の心を熱くさせた。 *** 「ん、んぅっ!」 「学習能力も無いみたいだな」 (なんで? なんでこんなことにっ!)  滅茶苦茶に暴れてみても、縛り付けられた体はほとんど動かない。目隠しで視界は奪われているし、口枷によって言葉を紡ぐこともできない。そんな中、直に体を撫で回される感触が、気持ち悪くてたまらなかった。 (殺すっ、絶対に殺す!)  口枷にギリリと歯を立てながら、航太は心で繰り返す。他人を信用してはいけないと分かっていた筈なのに、たった数ヶ月で相手を信じた馬鹿な自分を心から呪った。 「鳥肌すごいな。本当に触られるのがダメなんだ」  どこか楽しげな伊織の声に、「止めろ!」と返すがまったく伝わらない。 首を振るのが制止の合図と決めていたのにも関わらず、必死に首を横へと振っても彼の指は止まらない。そればかりか、腹をゆっくりと降りてきた指がついには航太の臍の中をクリクリといじりはじめた。 「ぐっ……うぅっ……ん」 「くすぐったい?」  優しげに響く彼の声音が今は心底恐ろしい。そもそも服を脱がせろなんて、一言も言っていなかった。 「どうしてこんなことになったのか、知りたい?」  問われて航太は首を横に振る。伊織は自分を裏切った。それに理由があったところで、許す材料になりはしない。 伊織を絶対許さない。 強い吐き気に襲われながら、解放されたらまずは殴ってやろうと心に決めていた。  高校へと入学したその日から、伊織の存在は知っていた。壇上に立ち、入学生代表の挨拶をしていたからだ。それだけならすぐに記憶から消えていたに違いないが、彼の見た目のインパクトは、これまでで群を抜いていた。  その時に受けた『イケメンのくせに背が高くて頭もいいとか嫌みなやつ』という印象は、周りにいた男子学生と大差のない感想だろう。

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