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遺伝子_3
「おー!予想はしてたけど、やっぱ女の子ばっかだねぇ」
週末、連れられて来たパンケーキの店は自宅から二駅離れた場所に構えられていた。
オープン初日は人目も引きやすい為もあるのか、入口には長蛇の行列。
「あれ並ぶのか?」
「そりゃあ並ばないと入れないだろ?」
一応念のためと確認を取ったが、愚問だと返された。
行列は女の客ばかりでちらほらと見える男も彼女連れで、その中に並ぶ俺達はかなり浮いた存在だった。
「………帰りたい」
「だーめ。約束だからね」
「分かってるよ」
俺に出来ることは黙って並ぶことだけだ。
「葉月、どれがいい?」
スマホで開いたメニュー表を一緒に覗くように促されて、仕方なく目を向ける。
ほとんど身長差のない俺達は近付けば肩同士がぶつかり、小さなスマホを見るために傾けた頭も髪が擦れあった。
あ、少し香水の香りがする。
「兄さんは?」
「うーん、バナナかキウイのやつで悩んでる」
「じゃあその二つにしてシェアすれば良いだろ」
「え、いいの?」
「最初からそのつもりだったろう?」
呆れたように見やれば、バレたかと舌を出す兄さん。
「さすが可愛い弟だね」
「どうも。伊達に何年も兄弟やってない」
ドリンクはどうしようかと兄さんが再び距離を詰めてきたところで、前に並ぶ女二人組の視線に気付いた。
もちろん二人の視線の先には兄さんが居て、俺は素知らぬ振りをしようと決めたところで、兄さんの方が俺の視線の先に気付いてしまった。
「俺達に何か用?」
人当たりの良い笑みを浮かべて彼女達に声を掛けるコミュ力には拍手を送りたいが、生憎様俺には迷惑な話だ。
「あ、いえ…男の人珍しいなって思って……」
茶髪のロングヘアーの女が嬉しそうに頬を染めながら、兄さんへと受け答える。
「確かに女の子ばっかりだもんねー。そっちも二人?」
「は、はい……」
「じゃあ、折角だし一緒にお茶しない?」
案の定の台詞を吐き出したところで、俺は兄さんの肩を掴む。
「兄さん、いきなり迷惑だろ」
それに俺だって知らない女とテーブルを囲むなんてまっぴらごめんだ。
「えー……迷惑、かな?」
ああ、全くこの人は……。
顔が良い人間が首を傾げて眉尻を下げてみろ、ほら言わんこっちゃない。女は頬を染めて首を振る。
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