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遺伝子_4

「全然!迷惑なんかじゃないです!むしろ嬉しいです!ね?」 と連れの女に同意を求めると、同じような肯定の返事が返ってくる。 「本当?やったー!」 ……この女好きめ。 三対一、どう考えても分が悪いのは俺の方だ。 何を言ったって最早無駄だろうと口を閉じた。 「葉月ー?可愛い女の子達とお茶出来るんだから、もっと嬉しそうな顔しような」 兄さんの両の手が俺の口角をぐいっと持ち上げる。 ニッと笑う顔が憎らしく、それなのに可愛いと思えてしまうのが悔しい。 何年もの片想いは拗れに拗れ、消えていくどころか年々重症になっていく。 「………やめろ」 両手を引き剥がすと膨れっ面をするから、また質が悪い。 「仲良しなんですね」 女の発言に兄さんは待ってましたとばかりに食いついた。 「俺達、兄弟だからねぇ」 「そうなんですか?」 「あ、見えない?まあ似てる方ではないか。でもね」 会話に興味のなかった俺は油断していて、伸びてくる手を認識した次の瞬間には視界がぼやけていた。 「ほら、眼鏡取るといい男なんだよ」 「………兄さん」 また眼鏡………そろそろチェーンでもつけておこうか? 「返して、何も見えないから」 「はいはい。ごめんね」 全く悪びれていない様子だが手元に眼鏡が戻ってきたので良しとしよう。 クリアになった視界で待っていたのは、女の視線。 「本当、眼鏡勿体ないですよ!」 なんて食い気味に言われても全然嬉しくない。 「でしょー!」 と嬉しそうに返したのは兄さんで、俺は何も言うまいと口を閉ざした。

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