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第1話 4/4

「違うもん!!!!」  思わずうつむいた俺を見て、千紘が叫ぶ。 「ちーちゃん………?」 「僕はずっと前から聖司さんのことが好きだったもん!  初めて出会った時から………一目惚れだったんだもん!」 「ち、ひろ……………」  今度は俺の目が潤みだす。 「確かにここ数日、ドキドキしてた。薬のせいだったかもしれないけど。  …………でも僕の想いはずっと前から聖司さんに向けられてたんだもん!」 「ち………ちーちゃん…………」  きっぱりとした千紘の言葉に、神谷とやらはがっくりと膝から崩れる。 「なぜだ、ちーちゃん…………こんなに愛してるというのに」 「………神谷博士、」  崩れ落ちた神谷に、千紘は静かに歩み寄り、目の前にしゃがみ込む。  そして、その手を取って握りしめる(なにやってんだ千紘)。 「ごめんなさい。神谷博士のこと、いつも頼れる人だって思ってたけど、気持ちには応えられなくて…………ごめんなさい」 「ちーちゃん……………」 「でも………勇気が出なくて今日まで告白できなかった、けど。  神谷博士のおかげで、僕、聖司さんと恋人になれたから…………神谷博士には、感謝しています」  残酷なのか無邪気なのかわからない千紘の声が静かに響く。 「ちーちゃん…………ふっ、ふふふふふはははははははは!!!」  が、神谷は立ち上がり、さらに不敵な笑い声をあげる。  壊れたのか? いや、そもそもガチでやばいんじゃねぇのか、この男。←正解です。 「よぅしわかった! でも、ちーちゃん、君は私のものだ! 必ずや振り返らせてみせる、このあふれんばかりの英知と技術にかけてね!!」 「いや、がっつりフラれてんだから諦めてもらえないっすかね………」  さすがに呆れて俺も突っ込むけど、神谷は意気揚々と車に乗り、立ち去って行った。 「な、なんなんだ、あの男は…………」  なんつーか、もうそんな言葉しか出てこない。 「ごめんね聖司さん、なんか巻き込んじゃって、」 「いやいいよ。つか、ただの変態ストーカーじゃねぇかアイツ。今度会ったら通報した方がいいぞ」 「で、でも………いきなりこんなことになって勘違いさせちゃって、聖司さん悲しませちゃっ、」  フォローするも、俺を思って泣きそうになってる表情にたまらず、俺は千紘を抱きしめる。 「千紘、…………俺も、一目惚れ、だったんだ」 「えっ、」 「だから…………あそこまで言い切ってくれて、嬉しかった」 「聖司さん…………」 「あいつのことは忘れて、これからは付き合っていこうな?」 「うん! …………ねぇ聖司さん、」 「ん?」 「これからもよろしくね❤」  千紘が可愛らしくはにかんで俺を見上げる。  あぁ、今日から俺たちは恋人なんだ、と強く実感する。  そのまま顔を引き寄せ、星空の下でキスをする。  なんて素晴らしいシチュエーション。  心も満たされ、温かな気持ちで千紘と見つめあい、微笑みあう。  …………これが星見ヶ丘商店街の混乱の始まりとも知らず。

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