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第4話 3/5

「あーーっクソッ!! ったくなんなんだよ!!」  ガコン、とそばにあったゴミ箱を蹴りつける。 「なんだよオマエ、いったい何が起こってんだよ?」 「あはは。怒った聖司さん、面白ーい」 「っ、」  笑ってない目で笑う千紘を思わずにらみつけてしまい、そのまま部屋のドアに手をかける。 「何? 別に一人で出ていくのは勝手だけどさ」 「うるせぇ、とりあえずあの変態クソ野郎に会ってくる」 「はぁ?」  それでも一応ドアの近くまで来てくれてるけど。 「悪いけど、今のオマエと話せられる状態じゃねぇから」  口を押さえている千紘は悪くないのをわかっているのに、ついそんな捨て台詞を吐いてしまい、俺は一人、部屋を出て行った。  ………しかし勢いで出た割には、力なくその神谷のいる研究所のドアをたたく。 「………ふふふ。やっぱり君一人が来たみたいだね」 「………………………」 「さて、かわいいちーちゃんはどんな変貌を見せてくれたかね?」 「あれが本性だっつのか? それとも凶悪な性格に変えたとかかよ?」 「それはどうかねぇ。まぁその顔から見るに、ずいぶんひどい言葉を浴びせかけられたのかな?  それで逃げてくるとは、相変わらずちーちゃんへの愛が足りないんじゃないかね?」  相変わらず、どつき回したいほどムカつくことを言う神谷だけど、ある意味正論にも聞こえ、怒りすらも引っ込み、ただただ意気消沈してしまう。 「今度はどんな方法で治す、って言い出すんだよオマエは」 「まぁまぁその前に。私もちーちゃんとの会話を楽しませてもらおうかな」  そういって、電話の子機を取り出す。 「私はちーちゃんならばどんな悪態でも毒舌でも喜んで受け入れられるからね。それとも………これだけ散々な目に遭わされてるから私のことを怒ってるかな? それもまた都合がいい」 「………どういう意味だ?」 「さて、こないだ登録したちーちゃんの電話番号をっと、」  子機をハンズフリーにし、神谷は千紘へ電話をかける。 『はい。………神谷博士?』 「そうだよ、ちーちゃんへの本物の愛を持つ神谷博士ちゃんだよ」 『神谷博士、本当にいつも面白くない冗談を言いますね』 「ふふふ、そうかい?」  やっぱり………毒舌か何か言わずにいられない薬でも飲まされたか。 「それにしてもちーちゃんは声も本当に可愛らしいねぇ。もちろん見た目もとっても可愛らしいよ?」 『…………んふふ、嬉しいな。もっと言ってくれる?』 「あ~もう、可愛い可愛い、ちーちゃんは本当に可愛いよ」 『ありがとう、最高です』 「ふふふ、そうか………ちーちゃんはそう思ってたんだね」  そんなご機嫌な神谷の言葉を聞きながら、あれ? と思う。 <あんまり可愛いとか言わないで………僕だって男の子なんだし> <だから可愛いとかやめてってばぁ>  つい可愛い、って言ってしまうと千紘はいつもプリプリ怒ってたっけ。  ホントは言われてうれしいのか? いや………そんなリアクションには見えなかったし。 「そんな可愛いちーちゃんとおせっくすしたいっていつも思ってるわけだけど………ふふふ、ちーちゃんはどうだい?」 『うん、僕も博士とえっちしたいな』 「そう、ちーちゃんも私とえっちしたいんだね?」 『そう、博士とえっちしたいよ』 <やだ! 僕は聖司さん以外の人とエッチなんかしないし、絶対したくない!>  あれも嘘ってことか!? いや、これはいくらなんでもあからさまだろ。  もしや、単純に俺を嫌って神谷が好きになる薬?  いやいや、何かもうひとつ、ヒネリがあるような………… 「博士ちゃんはちーちゃんの気持ちが聞けてうれしいよ、てことはちーちゃんは私のことが好きなのかな?」 『……………………………』 「ん? どうしたのかな?」  急に千紘が黙り込む。 「どうしたのちーちゃん、私のこと、好き? 嫌い?」 『……………………………』 「ちーちゃん?」 『………好き、とも思ってるし、嫌い、とも思ってるし』 「えぇ!?」  そこで神谷は急に衝撃を受けた顔をした。

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