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第6話 2/5

「いやぁ、すっかり遅くなりましたねー」 「気が付いたらずいぶん話し込んじゃって…………」 「言った通り、ここの三色団子うまかったっしょ?」 「あぁ、ちゃんと桜とヨモギの味がしてやっぱ本物は違うよな」 「ねー?」 「そもそもの素材もうまいってのもあるんだろうな。気に入ったよ」  店を出て、市原もとい、いっちーと笑い合う。 「それにあぁ見えていい奴でしょ? 壮哉って」 「確かに。でもどっちかーつーとあの顔は洋菓子が似合うっつーか、」 「それそれ!!」  この和菓子屋の三代目と言われる壮哉という男と三人でお菓子をつまみつつずっと談笑をしていた。  三代目とはいえ本人はまだまだ自由でいたいという奔放さもありながら、さぞやモテるだろうなって顔立ちなのに、それを鼻にかけていない爽やかな好青年、って感じで。 「んじゃ、俺はここで」 「え?」 「へ? 聖司さんはふたば亭に菓子折り持って行くんでしょ?」 「あ、そうだった。つい夢中になって………ついでに飯も食っとくか」 「んじゃねー」 「じゃあな、またここに立ち寄ることがあったら誘ってくれよ」 「りょうかーい」  店の前で別れ、ふたば亭の方へ足を運ぶ。  ふたば亭というのは俺自身が会社帰りによく行っている定食屋さんだ。  昔ながらの感じのいい店で、店主もその奥さんはもちろん、その息子も人柄が良さそうで。  たしか「ふたば亭のちーちゃん」って商店街で言われてる看板息子らしい。  そんで、いつもお世話になってるし、壮哉の店の菓子折りを持っていこうと思ってたんだっけ。 「いらっしゃい!」 「いらっしゃい。千紘、成田さんがいらっしゃったわよ」  そうそう、このご夫婦の明るく元気な挨拶。  でもなんだか妙に優遇されてる空気で、不思議な感じ。 「聖司さん、………いらっしゃい」  そしてなんでか元気のない息子。千紘って言われてたな。 「聖司さん、あの、ビー」 「とりあえずビールひとつね。あ、その前にこれ、いつもお世話になってるから」  何か話そうとする息子を差し置いて、ひとまず菓子折りを手渡す。 「つか、俺、聖司さんなんて呼ばれてたっけ?」 「えっ?」 「ま、いっか。んじゃ俺も千紘って呼んでいい?」 「……………………」  何も答えずに、千紘は店の奥にビールを取りに行く。  あれ? あんなに暗い奴だっけ?  もっとこう、ニコニコ笑顔で対応してたような気がするけど。  千紘はビールを置いたっきり、また店の奥へ行ってしばらく出てこなくて。  まぁ、そんなことはいい。  …………マズイな、これって一目惚れってやつかな。  さっきからあの和菓子屋の壮哉のことが気になって仕方がない。  いっちーの奴のせいでうっかりゲイだなんてカミングアウトさせられたら、壮哉も俺もそうだよなんてあっさり言ってたよな。  開き直ってる、ってより堂々としてる感じで恥じらってた自分にもう一度恥ずかしくなったりして。  そして、「聖司、俺と付き合ってみる?」なんて軽口叩いてさ………かなりドキッとしちゃったよ。  それに壮哉はSタイプつってたな………俺はMだから相性も良さげ、なんて思っちゃたりなんかして。年下に攻められる、最高じゃん。  でもいくらなんだって、あんなジョークみたいな言葉を真に受けていきなり告白なんかしたらドン引きされるだろうし、ここはまず、常連になってもっと親交を深めることが先決、だよな。  いやいや、ケータイ番号も交換したんだから、店以外で会えばいいんだよな、まずは清いお友達から始めて…………。  なんて壮哉の笑顔を思い出しながら、俺はうっとりとため息をついた。 神谷博士★恋の魔法薬 思い出リセット! 三ショック団子❤

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