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第6話 3/5
【Kamiya side】
「ふふ………ふふふふ…………ハーッハッハッハ!!」
神谷(略)研究所の地下に神谷博士の笑い声が響きます。
「実に見事だよ市原くん。これこそまさに大成功だ」
「いえ。これも博士の作る素晴らしい薬があってこそです」
「音羽くん、約束通り君の願いも叶えてあげたよ」
「はぁ、ありがとうございます………」
笑いかける神谷博士に、壮哉くんはどうにか同じように笑って答えます。
「まったくもって、我ながら惚れ惚れする薬が出来上がったよ。
これぞ世紀の大傑作………ピンクで壮哉くんを意識するように仕向け、白はちーちゃんを凌辱したあの忌まわしい記憶をリセット、そして緑で壮哉くんの性癖に見合った男に仕上げる」
「しかも、解毒剤はこの世に存在しません」
「ふふふ………市原くん、もう一つの方もきちんとちーちゃんに与えられたのかな?」
「はい。以前と同じ物でしたので何の疑いもなく受け取っていました」
神谷博士★恋の魔法薬
ときめきアップ! めろめろメロンパン・改❤
「以前より威力を増し、私の愛の言葉で火が付くように調合。
なおかつちーちゃんは今、傷心のさなか。…………完璧としか言いようがない」
「しかも、解毒剤はこの世に存在しません」
「ふふふ………これでやっとちーちゃんが手に入り、私だけの天使となってくれるのだ」
「博士、おめでとうございます(棒読み)」
と、そこで店からの電話がつながります。
「はい、こちらは神谷健康開発研究じょ」
『博士? 神谷博士ですか?』
「ちーちゃん! ………そんなに急いだ声をしてどうしたのかね?」
『聖司さんがっ………聖司さんが………っ』
ちーちゃんはすでに涙声になっています。
「一体どうしたというんだね? ただならぬ様子じゃないか」
『聖司さんが記憶喪失になったんですっ………』
「ふむ。それは穏やかじゃないねぇ」
『でもでもっ、僕、その前に聖司さんとケンカしちゃって………もしかしたら聖司さんは怒ってて………それかもしれなくて。
こんな話、博士にしていいのかわからないですけどっっ』
「いいんだよちーちゃん、私を頼ってくれて。さっそく詳しく話を聞かせてくれないかい?」
神谷博士は優しい声色でちーちゃんの話を一通り聞きます。
「ふぅむ………察するにまたしてもちーちゃんとあの害ちゅ、ゴホンゴホン、二人の仲を裂こうとする誰かの仕業だねぇ」
『博士、ぼ、僕はどうしたらいいんでしょう………このままじゃ………っ』
「まぁまぁ、泣くのはよしたまえ。この博士が何とかしてあげるから」
『ひっく、本当ですか!?』
「この間のように解毒剤を作ってみよう。ちーちゃんのお店が終わる時間までには作って届けてあげようじゃないか」
『そっ、それじゃお店が終わったら裏の入り口で待ってます。
博士っ、どうぞよろしくお願いしますっっ!』
「ふふふ。本当に健気だねぇ、ちーちゃんは」
神谷博士のニヤニヤは留まるところを知りません。
「さて………プレイルームの準備をして今度こそちーちゃんを迎えに行こう」
そして神谷博士は別の個室へ向かいます。
「市原くん、今夜はもう帰ってよろしい。
ちーちゃんを独り占めできるのは私だけだからね」
「はい、わかりました。ご武運を祈っています」
「音羽くんもお疲れさん。君の幸福も願ってるよ」
「あ、はい…………」
◆◆◆
車の音も遠ざかり、シンとする研究所。
「…………あの、」
「どうしました? 壮哉さん」
神谷博士が出かけていくと、壮哉くんが市原くんに恐る恐る声をかけます。
「なんか、ホントにこれでいいのかな、なんて………」
「今さら何をおっしゃってるんですか。
第一、最初に薬を作って欲しい、といったのは壮哉さんの方からじゃないですか」
「た、確かにそうだけど………実現するってなると」
「まさか本当になるとは思ってなかったでしょう?
壮哉さんは少々博士の力を侮っていましたね」
「……………………」
クスクス笑う市原くんに壮哉くんは黙り込みます。
「…………まぁ、侮れないのは博士だけではないですけどね」
「え?」
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