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第6話 4/5

【Seiji side】  ったく、いきなり「裏口で待っててほしい」ってなんなんだよ………。  定食の飯を食ってたら、いきなりこの店の息子の千紘とやらにそんなことを言われた。  とりあえず雨じゃなくてよかったな、と思う満天の星。  その場で断ろうと思ったけど妙に思いつめた顔だったし、もしかして告白? ってちょっと思ったけど、それはそれで長引かせるよかはっきりとノーと言っておいた方がいいし。  そうすっとここの定食屋も通いづらくなるけれど、まぁしょうがない。  …………それにしても本当に綺麗な星空だなぁ…………。 「ごめんね聖司さんっ、待たせちゃって」 「あぁ、別にいいよ」  やがて裏口のドアから千紘が慌てて出てくる。 「あのっ、あのね、聖司さん」 「なに?」 「…………………………」  こっちは何も言うことがないし、とりあえず千紘からの言葉を待つが、黙っているばかり。  そしてそのまま静かに二人で肩を並べてるだけで。  気のせいか、なんかこの感じ前にもあった気がするけど。  …………うん、やっぱ気のせいだな。 「………あの、さ」 「っ、うん、なに?」 「話すことがないんだったら帰ってもいいかな?」 「待って! 待って聖司さん!」  その場から離れようとすると、グイ、と腕を引っ張られる。 「なに? なんなの?」 「僕っ、………聖司さんのこと、好きだから」 「………あぁ、やっぱりそっち系の話か。ごめん、俺は」 「聖司さんの記憶がなくなっても、僕は聖司さんが好きだから!」 「は? 何の話だよそれ?」  俺の記憶ってなんだ? 何か失ってるとでも言うのか?  そんなはずはない、うん、そんなはずは…………。 「あの、」 「お願い、もう少し待ってて! お願い…………」  腕を掴んだままぽろぽろ涙を流し始めてるし。  キキーーーーーーッッ!!!  と、ブレーキ音が聞こえ、一台の車がそばに停まる。 「博士!」 「? …………博士?」  飛び出してきたのは、こんな時間にこんな場所で博士って呼ばれてるのに白いタキシードを着た男。 「お待たせちーちゃん! …………ってなんで貴様までいるんだ!?」  その男は俺の方を見て、あからさまに嫌な顔をする。  なんだよ、初対面で失礼な男だな。 「まぁいい。二人の話は済んだかい? ちーちゃん、そんな悲しそうな顔して…………そこの冷たい男にひどいこと言われたんだね、かわいそうに」  そう言って、博士とかいう男は千紘に手を差し出す。 「さ、ちーちゃんおいで? これからは私があらゆるものから守ってあげよう…………君が好きだよ」 「博士っ、僕も博士が………好きです」  千紘は頬を赤らめてうなずいて博士の手を取る。  って、何の光景なんだ!? これ。  こんなトコを見せつけるために俺を呼んだってのか?  ───じゃ、さっきの告白はなんだったんだよ。  あんな真剣な顔で「聖司さんが好き」なんて言いやがって。  …………聖司さんが好き。なんて。………… 『僕は聖司さんが好きだから!』 『僕は何があっても聖司さんと一緒にいられるだけでいいのに!』  なぜか頭の中で聞いたことのない千紘の声が響く。 『聖司さんがいれば嫌なことも怖いことも、全部消えてなくなっちゃうもん』 『僕の方も聖司さんといるの、すっごく幸せだし!』  この記憶は、一体…………。 『僕も、聖司さんが好き。 』 『サッカー、好きなんですか?』  ────────────あ。

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