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最終話 3/4
パコーン!!!
その直後、スリッパで脳天をぶっ叩かれる。
「たっ! てっめぇ、何しやが」
「私を誰だと思っている? このあふれんばかりの英知と技術があれば貴様のようなでんでん虫なぞに這い蹲られなくともちーちゃんを救うに決まっているだろう?」
「くっそ………俺の渾身の土下座は何だったんだよ」
「それになんだと? 自分は何をぶち込まれても構わないと?」
「うぐっ…………」
たっ、確かに言ったけど。
「ま、待った! 確かに言ったけど、千紘を泣かせるようなことだけは、」
「だったら、貴様が想い人としてずっとちーちゃんのそばで守り続ければいいだけの話」
「なんだとぉ? ………って、えっ!?」
ポカンとする俺の腕を引き、神谷は俺を立ち上がらせる。
「確かに私はヤケになっていた………だから最後にこんな無茶な投与を施してしまった………しかしそれはちーちゃんへの愛ゆえ、そして、貴様のちーちゃんへの愛が本物であるかを試すものでもあった」
「………神谷」
「しかしどんなことがあっても、貴様はちーちゃんを手放すことをしなかった。今まですべてそうだ………どれだけ私が邪魔をしようと、それに戦い、幾度も私を打ちのめしてきた」
「…………………………」
神谷が俺の手をがっちりと握る。
「完敗だよ、………聖司くん」
「かっ、神谷っ………!」
じゃ、じゃあ、俺たちは…………。
「博士、負け惜しみと無暗にカッコつけるのはやめた方がおよろしいかと(棒読み)」
が。市原の言葉に目の前の神谷はぶわっと涙をあふれさせ。
「ふぐっ………それを言うな、ばかぁっ、うわぁぁぁーん!」
そう言って俺が寝ていた方のベッドにすがって泣き出す。
「なっ、なんなんだよオマエはどんだけ情緒不安定なんだよ!」
「私だってちーちゃんが好きなんだよぅー、うわあぁぁあん!」
「わかったからいい加減メソメソしてねぇでさっさと千紘をどうにかしてくれよ!!」
「聖司さん、」
ポン、と肩を叩かれる。
「市原………」
「博士も博士なりに本気だったんです、これ以上責めないでいただければと」
「いや、とどめを刺したのはアンタだと思うけど………つか、結局おまえはどっちの味方なんだよ」
「博士も時間がありません」
「へ?」
「博士は二週間後にベルリン行きが決まっているのです。
だから千紘さんも連れて行きたく焦ってしまい、今回、このような無茶をしたのではないかと」
「………………っ」
てことは、神谷はこの商店街、いや、日本からいなくなるって事なのか?
つか、そうだったんなら俺だってあんなに焦ることもなかったってのに………。
「おい神谷! だったらなおさらその英知と技術ってのを駆使してさっさと解毒剤を作れよ!」
「ぐすっ………言われなくても頑張るもん…………」
───改めて思う。
なんでこんな男に振り回されなければいけなかったのか、と。
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