2 / 169

第一章・2

 安藤家の歴史は、古い。  それと同時に、青葉の家系も古くからこの屋敷に働いていた。  父も、祖父も、曽祖父も、ずっと安藤家の執事として仕えていた。  父が早逝し、青葉は中学を卒業と同時に屋敷に入った。  むろん、まだ若すぎる彼が執事として働けるわけもなく、家事使用人として智貴に仕えている。  Ωだが利発な青葉は、たちまち智貴のお気に入りになった。 『青葉、花瓶に花を活けてきてくれないか』 『青葉、夏の掛け軸はどれがいいと思う?』 『青葉、お茶のお供になってくれ』  何かにつけて、青葉を使う智貴だ。  しかしそれで、贔屓にされている、と青葉を憎む使用人はいなかった。  素直で優しい人柄を持つ青葉は、誰からも好かれ可愛がられていたのだ。  智貴の寵愛はやがて大人のそれとなり、青葉と夜伽を、と望むようになった。  だが、未成年の青葉を組み敷くことはためらわれた智貴だった。  清廉なαである智貴は、そこで青葉の18歳の誕生日に同衾を、と考えたのだ。

ともだちにシェアしよう!