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第一章・3

「明日、ようやく智貴さまのお情けがいただけるんですね」 「その前に、誕生会をしよう。何か欲しいものはないか?」 「僕は、何もいりません。智貴さまさえ居てくだされば」  智貴は青葉の髪をいじることを止め、そっとその額にキスをした。  そして、甘い表情をやや引き締めた。 「明日の午前10時に、大切なお客様がいらっしゃる。彼にコーヒーをお出しして欲しいけれど、いいかい?」 「コーヒーを、ですか?」  智貴は、紅茶党だ。  だがお客様に併せて、彼にもコーヒーを出すべきだろうか。  青葉は一瞬ためらったが、すぐに良い笑顔と返事をよこした。 「はい。午前10時に。応接室でよろしいですか?」 「お茶は11時くらいに頼むよ」  そこまでで智貴は青葉から離れ、カップを重厚なオークのテーブルへ置き寝室へ向かった。 「おやすみなさいませ、智貴さま」 「おやすみ」  青葉は、その後ろ姿がドアの向こうへ消えるまでずっと見守っていた。 (明日、僕もあのドアの向こうへ入ることを許されるんだ)  そして、智貴さまと……。  耳まで赤くして、青葉は胸を高鳴らせていた。

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