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第二章・3
「はい、ここが君の部屋。荷物は……、あぁ、もしもし?」
お屋敷で与えられていた部屋より広い、機能美を持った一室を青葉は与えられた。
芳樹が携帯で話し終えるとすぐに、スーツの男たちが数名段ボール箱を抱えて入って来た。
「これで全部です」
「ご苦労さん。少し休んでいくか?」
「いえ、滅相も無い」
スーツの男たちは、入って来たと同じくらいの慌ただしさで出ていった。
箱を開けると中には、安藤邸で使っていた青葉の私物が詰められていた。
(僕、ホントにお暇を出されたんだ)
「う、うぅ、う。っく、うぅ……」
「泣いている暇があったら、荷物を片付けるんだな。終わったらリビングへ来い」
それだけ言って、芳樹は部屋から出ていった。
青葉は、泣いた。
泣きじゃくりながら、衣類をクローゼットへ収め、筆記具をデスクに片付け、書籍を本棚へ並べた。
そして、わんわん泣いた。
涙が枯れると、ようやく残った歯ブラシやマグカップなどを抱えて、リビングへのろのろと出ていった。
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