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第二章・4
やたらと広いリビングの、やたらと大きなソファに掛けて、芳樹は電話の最中だった。
「だから、それは今度。いいですね、近いうちにハッキリさせますから」
何か揉めているようだったが、青葉がリビングへ現れると通話を切った。
「ああ、引っ越しは済んだか?」
「はい」
「何か飲み物を淹れよう。コーヒーは嫌いか?」
「僕がやります」
それには、首を横に振る芳樹だ。
「まだキッチンの勝手も知らないだろう。自分でやった方が、早い」
「では、紅茶をお願いします」
精一杯の青葉の反抗だったが、芳樹はそれを明るく笑った。
「いいね、それ。従順なイヌより、我儘なネコの方が私は好きだ」
茶葉を用意しながら、芳樹はご機嫌そうだった。
「僕は、イヌでもネコでもありません。人間です!」
「その割には、安藤さんに大人しく飼われてたみたいだったが?」
「智貴さまを悪く言うのは、やめてください」
「智貴さま、か。私のことは『芳樹さま』なんて呼ばないでくれよ」
「では、何とお呼びすれば」
「芳樹さん、でいいよ」
そんな無礼な、と青葉は震えた。
いきさつはどうあれ、この方は僕の新しいご主人様なんだ。
それを、芳樹さん、だなんて!
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