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第三章 初体験
「さて、寝るか」
バスを使ってほかほかの青葉の肩を、芳樹は抱いた。
「え?」
「寝室は、こっち」
「え? ちょっと」
あれよあれよという間に、青葉はキングサイズのベッドに放り上げられた。
「さ、今からは大人の時間」
覆いかぶさって来る芳樹を、青葉は必死で押し返した。
「イヤ! 嫌です! やめてください!」
あまりに青葉が嫌がるものだから、芳樹は疑問を覚えた。
「ん? 安藤さんにあんなに執着されてたのに、彼とセックスしたことないのか?」
「ありません! 今夜、してもらうはずでした!」
18歳の誕生日に、智貴さまにお情けをいただくはずだったのに。
それを、こんな。
「こんなの、あんまりです……」
はぁ、と芳樹は溜息をついた。
「ロマンチストの安藤さんが考えそうなことだな」
要するに、大人の儀式。
そして、大人になるまでずっと待っていたのだろう、あの男は。
「解った。無理強いはしないよ。もう、寝なさい」
「……」
黙って背を向けたままの青葉にそう言うと、芳樹は寝室を出ていった。
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